「もうやってられない」と感じる職場は、気合いや根性でどうにかする場所ではありません。そこでまず大事になるのは、「成果」よりも「自分の安全」と「これ以上すり減らさないこと」です。この記事では、今すぐ辞める/辞めないを決める前にできる、現実的なサバイバル術をまとめます。
具体的には、①今の状況がどれくらい危険かを見極める視点、②毎日を少しだけマシにするその場しのぎの工夫、③ムリな要求から自分を守る境界線の引き方、④一人で抱え込まないための「外部避難先」の作り方、⑤辞めるかどうかを急いで決めなくていい計画の立て方、などです。
「理想論」ではなく、明日から実際に使える言葉や行動レベルに落としてあります。職場は変わらなくても、「自分だけは守る」ための選択肢を増やすことで、少しでも呼吸しやすくなりますように。
いま「もうやってられない」と感じているあなたへ
毎朝、会社のことを考えるだけで胃が重くなる。
仕事のチャットが鳴るたびに心臓がギュッとなる。
帰ってきても頭の中は仕事のことでいっぱいで、寝ても回復した感じがしない。
そんな状態が続くと、「もうやってられない」「こんな職場、早く辞めたい」という気持ちになるのは、とても自然なことです。
それは決して「甘え」ではなく、あなたの心と体が出している危険信号です。
ただ、現実にはすぐに辞めるのが難しい事情もあります。
- お金の不安が大きい
- 家族を養っている
- 次が見つかるか分からない
- 転職活動をする気力も残っていない
「もうやってられない」と「でも、辞められない」のあいだで、心が引き裂かれるような感覚になりやすい時期です。
この記事では、「いきなりすべてを変える」のではなく、
- まずは 自分をこれ以上すり減らさない
- そのうえで いつでも動けるように準備しておく
という二本立てで考えていきます。
「もうやってられない」が教えてくれているサイン
心と体が限界に近づいているサイン
次のような状態が続いている場合、すでにかなり無理をしているサインです。
- 休みの日も仕事のことばかり考えてしまう
- 日曜の夕方から強い憂うつ感に襲われる
- 朝、布団から出るのにすごく時間がかかる
- 仕事中、些細なことで涙が出そうになる
- ミスが増え、自己嫌悪が止まらない
- 食欲が極端に増えたり減ったりする
- 寝ても疲れが取れない・何度も目が覚める
これらは「がんばりが足りない」のではなく、がんばりすぎている結果です。
職場の「構造」に問題があるサイン
あなた個人の努力ではどうにもならない、職場側の問題もあります。
- いつも誰かが怒鳴られている/詰められている
- 人がどんどん辞めていく
- 業務量が明らかに人員と見合わない
- 役割が曖昧なのに、責任だけ押し付けられる
- 「休みたい」と言い出せない空気がある
- ミスの責任だけ個人に押し付けられる
こうした環境では、「もうやってられない」と感じるのが普通です。
ここで大事なのは、
「自分が弱いからつらい」のではなく、
「この環境だからつらいところも大きい」
という視点を持つことです。
自分を責めるだけでは、状況は一ミリも良くなりません。
まず「自分の安全」を確保する:緊急度の見極め
サバイバル術の前提として、今どれくらい危険なのか をざっくり把握しておきましょう。
レベルA:すぐにでも離れることを優先したい状態
以下のような場合は、「今すぐ辞める/休む」選択も真剣に考えてよいレベルです。
- 上司や同僚からの暴力・暴言・人格否定が日常的
- 違法な長時間労働が当たり前(残業代も出ない)
- 明らかなハラスメント(セクハラ・パワハラなど)がある
- 命の危険を感じるレベルの業務を強制されている
- 自分を傷つけたい気持ちが強くなる・消えてしまいたいと感じる
このレベルでは、「がんばって続ける」ことが最優先ではありません。
信頼できる人や専門窓口に相談し、「どう離れるか」を一緒に考えてもらう段階です。
レベルB:心身はきついが、最低限の安全は確保されている状態
- 心身の不調はあるが、治療や休養で回復の余地がある
- 法律的に完全なアウトではないが、グレーゾーンが多い
- 職場に一人以上、信頼できる人がいる
- 休日はなんとか休めている
この場合は、
- 今すぐ辞める準備
- 今の職場で当面をしのぐ工夫
を並行して進めるイメージになります。
レベルC:不満やストレスはあるが、今はまだ踏ん張れる状態
- 仕事はきついが、心身の不調はまだ小さい
- 上司や同僚に相談すれば調整の余地がありそう
- 将来のために「今だけ頑張る」と割り切れる要素もある
この場合でも、「将来の自分を守る準備」を始めておくと、後々の選択肢が増えます。
毎日を少しでもマシにする「その場しのぎ」のサバイバル術
職場がすぐには変わらないとき、今日をどうやって乗り切るかが大事になります。
ここでは、なるべくエネルギーを使わずにできる工夫をまとめます。
1. 「完璧に応える」をやめて、「溺れないライン」を決める
しんどい職場ほど、「期待に応えねば」と思いやすい人が損をします。
一時的にでいいので、基準を下げる練習も必要です。
- すべてに全力で応える
→ 沈まないための最低ラインを守る
たとえば、
- すべての依頼に全力で応える → 期限が近いものだけ本気、それ以外は「いつまでならできます」と調整
- すべて自分で抱え込む → 引き受ける前に「他に担当者はいるか?」を確認する
「期待に応える」よりも、「自分が沈まない」を優先してよい時期です。
2. 仕事を「やる」「やらない」「今はやらない」に分ける
やるべきことが多すぎると、頭の中がごちゃごちゃして、何から手を付けていいか分からなくなります。
そこで、手元のメモに3つの箱を書いてみてください。
- 【やる】今日中に必要なもの
- 【今はやらない】期限が先・優先度が低いもの
- 【やらない】今の自分の役割ではないもの
ポイントは、「今はやらない」と「やらない」を意識的に作ることです。
「やらない」に入ったものは、上司に確認しながら、こう伝えてみてもかまいません。
「今抱えているのが◯◯と△△と□□で、どれを優先しましょうか?」
すべてを同じ熱量で抱えなくていい、という感覚を少しずつ身につけていきます。
3. 関わる人を絞る
職場のストレスは、仕事内容そのものよりも「人間関係」から来ることが多いです。
今の時期は、意識して関わる人を絞るのも立派なサバイバル術です。
- 必要最低限の連絡にとどめる相手
- 相談や雑談をする相手
を自分なりに分けておきます。
苦手な人との会話は、
「必要事項+一言だけ」で完結させてOKです。
「資料をお送りしました。ご確認お願いいたします。」
「確認しました。◯◯で進めます。」
世間話や愛想笑いまで頑張らなくてかまいません。
4. 定時直後の「5分クールダウン」をルール化する
退勤した瞬間も、頭が仕事モードのままだと心が休まりません。
家に着く前に「仕事モードを切る5分」を決めておくと、回復力が少し上がります。
例:
- コンビニや公園に寄って、5分だけ座る
- スマホのメモに「今日やったこと」を3行だけ書く
- 1日の中で「もうやってられない」と思った瞬間を1つだけ書き出す
「書いたら、今日はここまで」と自分に宣言しておくと、頭の中のループが少し弱まります。
ここだけは守りたい「境界線」の引き方
サバイバル術でとても大事なのが、ムリな要求に対して線を引くことです。
とはいえ、はっきり断るのは怖い、というのもよく分かります。
そこで、「角を立てずに、でも自分を守る」言い方の例をいくつか挙げます。
1. 仕事の追加依頼をされたとき
いきなり「無理です」と言いづらい場合、まずは現状を並べて“相手に選んでもらう”形にします。
「今、◯◯と△△と□□を担当しています。
すべて今日中は難しいので、どれを優先しましょうか?」
「◯時までなら対応できますが、それ以降は別のタスクに入ります。
それでもよければお受けします。」
「自分だけで背負わない」ことが大切です。
2. 無茶な締切を言われたとき
「このボリュームだと、◯日までが現実的です。
もし今日中が必須であれば、内容を絞るか、他の方にも協力いただけますか?」
「できます/できません」ではなく、条件付きでの受け方 に変えます。
3. 感情的な言い方をされたとき
相手の言葉がきついとき、言い返せなくて黙り込んでしまうことも多いかもしれません。
そんなときは、「内容」と「言い方」を分ける意識が役立ちます。
「ご指摘の内容は理解しました。
ただ、言い方が少しきつく感じてしまい、うまく頭に入ってきませんでした。
もう一度、ポイントだけ教えてもらえますか?」
実際にここまで言えない場合もありますが、
最低限「自分の中では切り分けておく」だけでも、自責の度合いが変わります。
感情を一人で抱え込まないための「外部避難先」をつくる
つらい職場ほど、「ここで頑張れていない自分はダメだ」と感じやすくなります。
そうなると、だんだん人に弱音を吐けなくなっていきます。
しかし、つらさを言葉にできる場所 がないと、心の中で圧力が高まり続けてしまいます。
1. 職場の外に「仕事の話をしてもいい人」を一人つくる
家族、友人、元同僚、SNSでつながった人など、誰でもかまいません。
大事なのは、「弱音を吐いても否定されない人」です。
- 具体的なアドバイスは求めない
- ただ話を聞いてもらう
- 「それはしんどいね」と言ってもらえるだけでいい
そんな相手が一人でもいると、心の負担はかなり違います。
2. 愚痴専用ノートを作る
人には言いづらいことは、ノートにそのまま書いてもかまいません。
「正しい言葉」にする必要はありません。
- ムカついたこと
- 悲しかったこと
- 「もうやってられない」と思った場面
なんでも書いてOKです。
書いたあとに読み返さなくても大丈夫。
頭の外に出すこと自体が、「自分の味方を一人増やす」ような効果があります。
「辞める/辞めない」を今すぐ決めなくていい計画の立て方
心が限界に近づいているとき、「今すぐ辞めるか」「とにかく耐えるか」の二択に見えがちです。
でも実際には、その間にたくさんのグラデーションがあります。
ここでは、時間軸で考えてみます。
今日〜1週間:とにかく「これ以上悪化させない」
- 睡眠・食事・休憩の時間だけは確保する
- 無茶な残業や追加タスクを増やさないよう、境界線を意識する
- 「もうやってられない」と思った場面をメモしておく
この期間は、決断よりも ダメージを増やさないこと が目的です。
1週間〜3か月:情報を集めて、「いざとなれば動ける状態」を作る
- 転職サイトに登録だけしてみる
- 興味のある職種や業界について調べてみる
- 自分のスキル・経験を書き出してみる
- 月々の支出を書き出して、「最低限いくら必要か」を把握する
ここでは、「今すぐ動く」よりも、
「本当に限界になったとき、いつでも動けるようにしておく」
ことを目指します。
3か月〜1年:少しずつ「出口」を増やす
- 資格や学習など、次の仕事につながりそうなことを少しずつ進める
- 社外の人とのつながりを増やす(勉強会、オンラインコミュニティなど)
- 「この会社に残る場合」と「離れる場合」の両方で、メリット・デメリットを書き出してみる
長期的な視点を持つと、今のつらさが「一生続くもの」ではなく「一時的な状態」だと感じやすくなります。
「自分だけを守る」ための仕事の受け方・手放し方
しんどい職場で真面目に働いている人ほど、「頼まれたことを全部引き受けてしまう」という傾向があります。
ここでは、仕事の受け方・手放し方のコツを少し整理します。
1. 「私がやらないと回らない」という思い込みを疑ってみる
もちろん、あなたが抜けたら困る場面はたくさんあるでしょう。
でも、それは 会社の事情 であって、あなたが無限に犠牲になる理由にはなりません。
- 自分が倒れたら、その仕事は結局誰かがやる
- つまり、「今、全部抱え込んでも、後で誰かがやる」のは同じ
- それなら、「倒れる前に少しずつ手放す」が一番ダメージが少ない
こう考えると、「任せる・断る」はわがままではなく、長期的なリスク管理 だと分かります。
2. 手放し方の具体例
(1)人に引き継ぐ
「◯◯の業務、今後◯さんにも少し覚えてもらえたら助かります。
まずはこの部分だけ一緒にやってみませんか?」
「このタスク、私一人では回し切れないので、分担案を考えてみました。」
「丸投げ」ではなく、「提案」として出すと通りやすくなることもあります。
(2)やり方を簡略化する
- つい丁寧に作り込みすぎている資料を、フォーマット化して手間を減らす
- 毎回ゼロから作っているメールやチャットの文面を、テンプレ化する
「手を抜く」のではなく、「同じ成果を少ない負担で出す」方向に工夫してみます。
心がすり減りにくい働き方へ「ゆるく舵を切る」
今の職場を何とかやり過ごしながら、少しずつ「すり減りにくい働き方」へ進んでいくこともできます。
1. 自分にとって「合わない働き方」を言語化しておく
- 怒鳴る文化が当たり前のところは合わない
- ルールがコロコロ変わる環境はきつい
- 一人に仕事が集中するチームは苦しい
こうした「合わない条件」をはっきりさせておくと、次の職場を選ぶときの基準になります。
2. 「こういう環境なら頑張れるかも」を考えておく
- フィードバックが言葉で伝えられる
- 業務量と人員が大体見合っている
- 休むときに罪悪感を過剰に持たなくていい
具体的な条件を少しずつメモしておくと、「次に進むときのコンパス」になります。
3. 自分の「使いたい力」を知る
「もうやってられない」と感じる職場では、せっかくの能力が全く活かされていない、ということもあります。
- 本当は、人と話しながら整理するのが得意なのに、ひたすら単純作業ばかり
- コツコツ作り込むのが得意なのに、いつも火消し・急ぎ対応だけ
「どんなときに、少しだけ楽しい/やりがいを感じるか」を思い出してみてください。
その感覚が、今後の仕事選びのヒントになります。
おわりに:いまのあなたに伝えたいこと
「もうやってられない」という言葉の裏には、たくさんの我慢と、たくさんの努力があります。
何もしてこなかった人からは、その言葉は出てきません。
- 何度も飲み込んできた悔しさ
- 理不尽だと思いながらもやり抜いてきた仕事
- 誰にも気づかれないところで積み重ねてきた時間
そのうえで、いまのあなたは、ようやく「本音」を口にし始めたところなのだと思います。
職場がすぐに変わらなくても、
自分の基準や境界線、逃げ道や出口の準備は、少しずつ整えていくことができます。
- 今日は、ムリなお願いを一つだけ断ってみる
- 今日は、愚痴ノートに3行だけ書いてから寝る
- 今日は、「もうやってられない」と思った自分を責めない
そんな小さな一歩でも、積み重ねれば、いずれ「ここから抜け出す力」につながっていきます。
この職場がすべてではありません。
今のあなたのつらさは、環境と、これまでのがんばりと、いろいろな事情が重なった結果であって、
あなたの価値そのものを決めるものではありません。
どうか、自分を責める言葉だけは少しずつ減らして、
「自分だけは、自分の味方でいよう」と心のどこかで決めてみてください。
その決意こそが、どんな職場にいても、あなたを守ってくれるいちばんのサバイバル術になります。

