理不尽な人にひどいことを言われたり、ぞんざいに扱われたりすると、
出来事そのものが終わったあとも、心の中ではずっと続いてしまいます。
- 「私のほうが悪かったのかな」
- 「あの場面でこう返せなかった自分がダメなんだ」
- 「もっとちゃんとしていれば、あんなふうに言われなかったはず」
そうやって、自分ばかりを責め続けてしまうと、
傷ついた出来事そのものよりも、「自分責め」そのものが苦しさを大きくしていきます。
この記事では、
- なぜ理不尽なことがあると、自分を責めてしまいやすいのか
- 「事実」と「相手の問題」と「自分の領域」を分けて考える視点
- できるだけ自分を責めすぎないための、心の守り方・考え方
- 具体的なノートワークや、今日からできる小さなセルフケア
- 今後同じようなことが起きたときのための「心の準備」
を、ゆっくり整理していきます。
目指したいのは、
「理不尽な人をきれいさっぱり許せる自分」になることではなく、
「理不尽なことが起きても、自分だけを傷つけ続けないでいられる自分」
です。
全部をいきなり変えようとしなくて大丈夫です。
読んでいて「これならできそう」と思えたところを、ひとつだけでも拾ってもらえたらと思います。
理不尽な人に傷つけられたあと、なぜ「自分ばかり」責めてしまうのか
その場では何も言えなかった自分が、あとから責めの対象になる
理不尽な人に出会う場面は、いろいろあります。
- 明らかに不公平な叱られ方をした
- 相手の機嫌に振り回されて、心ない言葉をぶつけられた
- 説明もなく責任だけ押しつけられた
- こちらの事情を無視した要求をされ続けた
その瞬間、自分の中では
- 驚き
- 悲しさ
- 怒り
- 悔しさ
が一気に押し寄せてきて、
頭も心もフリーズしてしまうことがよくあります。
そして時間が経ってから、
ようやく言葉が出てくるのです。
- 「あのとき、こう言い返せばよかった」
- 「それはおかしいですよね、と言うべきだった」
ところが、言えなかった自分を思い浮かべて、
「あの場面で何も言えなかった私は弱い」
「黙っていた私が悪い」
と、自分に矢印を向けてしまいがちです。
まじめな人ほど、「自分のせい」にしやすい
理不尽な扱いを受けたとき、
「自分も悪かったところがあるかもしれない」と考えられることは、本来とても大事な力です。
ただ、まじめで責任感が強い人ほど、それが行き過ぎてしまい、
- 相手の問題まで「自分の責任」のように背負う
- 「あの人にも事情がある」と、自分だけを我慢させる方向に使ってしまう
- 「自分がもう少し頑張れば、解決するはず」と思いこんでしまう
という状態に陥りやすくなります。
すると、
「相手が理不尽である」という事実よりも、
「それにうまく対処できない自分がダメだ」という図が強くなる
ため、傷が深くなってしまうのです。
「関係を壊したくない」と思うからこそ、自分側に理由を探してしまう
職場・家族・身近な人ほど、
- 今後も付き合いが続く
- 「関係そのもの」を失いたくない
という事情もあります。
そのとき心の奥で起きるのは、こんな動きです。
- 「相手が理不尽だ」と認める → その人を信頼できなくなる
- 信頼できない人との関係を続けるのはしんどい → でも離れられない
- だったら、「自分が悪かった」ことにしたほうが関係は保ちやすいかもしれない
こうして無意識のうちに、
「相手に問題がある」より「自分が悪かった」という結論のほうが、表面上はラク
になり、自分責めのほうに寄っていきます。
「事実」「相手の問題」「自分の領域」を分けてみる
自分を守るための最初のステップは、「混ざっているものを分ける」ことです。
まずは「何が起きたか」だけを書き出す
ノートやスマホのメモに、
感情はいったん横に置いて、
「実際に、何が起きたのか」
だけを箇条書きにしてみます。
例:
- 会議中、上司が突然声を荒げて、自分だけを名指しで責めた
- 事前に共有されていなかったルールで、責任を問われた
- 相手は最後まで、「言い方がきつかったかもしれない」とは認めなかった
ここでは、
- 「ひどかった」「ありえない」などの評価
- 「私がダメだから」などの解釈
はいったん書かなくて大丈夫です。
次に、「これは相手側の問題だ」と切り分けてみる
書き出した箇条書きを眺めながら、
「これは、相手側の問題・課題の領域だな」
と思える点に印をつけていきます。
たとえば、
- 大声で怒鳴る
- 話を最後まで聞かず決めつける
- 相手の状況を一切確認せず、一方的に責める
- 自分の機嫌を仕事に持ち込む
といった行動は、
「相手の感情のコントロールの問題」
「相手のコミュニケーションの習慣の問題」
であり、
あなたが背負うべきものではありません。
ここが曖昧なままだと、全部が「自分のせい」に見えてしまうので、
「これは相手の領域」と、頭の中で線を引いておく
ことが大切です。
最後に、「自分の領域」にだけ目を向けてみる
その上で、あらためて自分に問いかけてみます。
- 自分の行動や準備の中で、「ここはたしかに工夫の余地があったな」と思う部分はあるか
- もし今後同じような場面になったら、自分なりに変えてみたいところはどこか
ここでのポイントは、
「自分の領域」=「自分だけが全責任を負うべき場所」
ではない、ということです。
むしろ、
「今後、自分のために変えてみてもいい場所」
として見るイメージのほうが近いかもしれません。
「相手の問題」と「自分の領域」を分けて考えることで、
必要以上の自分責めから、少しずつ離れられるようになっていきます。
理不尽な出来事のあとにできる、心の応急処置
① 「今、何に一番傷ついているのか」を言葉にしてみる
出来事そのものよりも、
「その中のどのポイントに一番傷ついたか」を言葉にしてみます。
- 「私の話を一切聞いてもらえなかったことに傷ついた」
- 「人前で恥をかかせるようなやり方をされたことがつらかった」
- 「自分の努力を何も見てもらえていなかったことが悲しかった」
ここをはっきりさせると、
「私は、『自分をどう扱われたか』によって傷ついたんだ」
と分かり、自分責めだけではない視点が持てます。
② 「こう感じるのは当然だ」と自分に一言添える
理不尽なことがあった直後は、
感情が大きく揺れて当たり前です。
- ずっとイライラする
- 突然涙が出てくる
- なかなか仕事に戻れない
そんな自分に対して、
「この状況で、こう感じるのはむしろ自然だ」
と、一言だけでも自分に添えてあげてください。
「いつまでも引きずってしまう自分」を責めるよりも、
「これだけのことがあったんだから、心が乱れるのも無理はない」
と認めるほうが、回復へのスタートになります。
③ 身体から「今ここ」に戻してあげる
頭の中が出来事でいっぱいになり、
ぐるぐる考えが止まらないときは、
身体から今の感覚に戻してあげるのも一つの方法です。
例えば、
- 深呼吸を一度だけゆっくりして、息を吐くほうを長めにする
- 手を温かいお湯で洗う/マグカップを両手で包む
- 足の裏を床にぎゅっとつける感覚に意識を向ける
小さなことですが、
「頭の中の世界」から「今ここの世界」に戻るための橋渡し
になります。
自分だけを責めすぎないための、考え方の切り替え
「あのときの私は、あのときの条件で動いていた」
後から振り返ると、
- 「もっとこう言えばよかった」
- 「あそこで席を立つべきだった」
- 「黙って耐え続けたのがいけない」
と、今の知識と感覚で採点してしまいがちです。
でも実際のところ、
- そのとき持っていた情報
- そのときの体力・メンタルの状態
- 周りとの関係性
- どれだけ追い詰められていたか
は、今とは違っています。
だからこそ、
「あのときの私は、あのときの条件の中で精一杯だった」
という視点を、あえて採用してみてほしいのです。
「完璧ではなかったかもしれないけれど、
あの瞬間の自分にとっては、あれが限界だった。」
そう認めることは、自分を甘やかすことではありません。
むしろ、
「状況と心の状態を考えたうえで、自分を現実的に評価する」
という、とてもまじめな態度です。
「もし大切な友だちが、同じ経験を話してきたら?」
自分を責めすぎていると感じたときは、
視点を入れ替える質問をしてみます。
「もし、大事な友だちが全く同じ状況で、全く同じ行動をしたと話してきたら、
自分はなんと言ってあげるだろう?」
- 「あなたが全部悪い」と言うでしょうか?
- 「もっとやりようはあったでしょ」と責め立てるでしょうか?
きっと、多くの人は、
- 「それはつらかったね」
- 「あの状況なら、何も言えなくても無理はないよ」
- 「よく一人で耐えてたね」
そんな言葉をかけるのではないでしょうか。
その言葉を、そのまま自分にも渡してあげる。
最初はむずがゆくても、
少しずつ「自分に対する声のトーン」を変えていく練習になります。
ノートでできる、シンプルな「心の守り方」ワーク
ワーク① 「事実」と「解釈」を左右に分けて書く
1ページを真ん中で線引きして、左と右に分けて使います。
- 左側:起こった事実
- 右側:そのとき自分がつけた解釈・意味づけ
【左:事実の例】
- 会議中、上司が「こんな簡単なこともできないのか」と言った
- 業務量が明らかに偏っていることを伝えたら、「みんなやっている」と返された
【右:解釈の例】
- 私は社会人としても人間としてもダメだ
- こんなこともできない自分は、ここにいる価値がない
書き出した後、右側を眺めながら問いを立てます。
「この解釈は、“事実100%”と言い切れるだろうか?」
「他の見方をするとしたら、どんな言い方があり得るだろう?」
例えば、
- 「上司は自分のストレスをぶつけてきただけかもしれない」
- 「無茶な業務量を認めたくないから、『みんなやっている』と言っているだけかもしれない」
といった「別の仮説」をあえて作ってみると、
少しだけ距離が生まれます。
ワーク② 「これ以上、自分が背負わなくていいものリスト」
同じくノートに、
「これは、本当は私が背負わなくていい」
と思えることを、箇条書きにしていきます。
- 他人の機嫌の悪さの理由
- 相手の感情コントロールの不足
- 組織の長年の歪み
- 相手が今まで学んでこなかったコミュニケーションのツケ
書いていくうちに、
「自分が背負おうとしていたものの多さ」
に、気づきやすくなります。
一度「書いて見える形」にすることで、
心の中の荷物を少し下ろす練習になります。
今後同じようなことが起きたときの「心の準備」
理不尽な人がいる場所にいる限り、
残念ながら、似たような場面が完全にゼロになるとは限りません。
だからこそ、
「同じようなことが起きたとき、今度はこうしてみよう」
という「心の作戦」を、少しだけ持っておくと安心です。
① 「モヤッとしたら一度、席を外してもいい」と決めておく
その場で言い返すかどうかの前に、
- トイレに立つ
- コピーを取りに行くふりをする
- 飲み物を取りに行く
など、「その場からいったん離れる」選択肢を持っておきます。
「理不尽な言動を受け止め続けなければならない」
と自分に強制せず、
「この場面から一度離れて、自分を落ち着かせることを優先していい」
と許可しておきます。
② 「その言い方はやめてください」とだけ伝える練習
余裕があるときは、
内容ではなく「言い方」に絞って伝えるのも一つです。
- 「内容については改善したいと思いますが、その言い方は正直つらいです」
- 「指摘はありがたいのですが、人前でそう言われるのは苦しいです」
これをいきなり完璧に言う必要はありません。
頭の中で何度かシミュレーションしておくだけでも、
「もし次にああ言われたら、このカードを切ってもいい」という安心材料になります。
日常の中でできる、小さなセルフケア
理不尽なことがあった日は、
いつもより多めに「自分の側に立ってあげる時間」をとってほしいなと思います。
- いつもより少しだけ早く寝る
- 好きな飲み物をゆっくり味わう時間をとる
- 好きな香りや音楽を使って、頭を休ませる
- 信頼できる人に、「詳しく話せないけど、今日はちょっとつらいことがあった」とだけ伝える
どれも些細なことですが、
「今日はよく頑張ったね」と、自分を扱う行動
そのものが、心の回復を早めてくれます。
おわりに:理不尽さの中でも、自分の尊厳だけは守っていく
理不尽な人に傷つけられたあと、
一番つらくなるのは、
相手の言動そのものよりも、
「その出来事を使って、自分を何度も傷つけ直してしまうこと」
かもしれません。
- 「私が悪いから、ああなったんだ」
- 「あんなふうに扱われるくらいだから、私は大した価値がない」
そんなふうに、自分の尊厳を自分で削ってしまうのは、
本当は、何よりもしんどいことです。
この記事の中で、もし一つでも
- 「これは相手の問題として切り離していいのかもしれない」
- 「あのときの自分なりに、精一杯だったと言ってあげてもいいかもしれない」
- 「今度同じようなことがあったら、こうしてみよう」という小さな作戦
が見つかっていたら、
それだけで一歩、心を守る方向に進めています。
理不尽な人や状況を、すぐに変えることは難しくても、
「何を自分のせいにしないか」
「自分をどこまで大切に扱うか」
は、少しずつ選び直していけます。
これからもし似たようなことが起きたとしても、
そのたびにすこしずつ、
自分だけを責め続けるパターンから、
自分の味方でいてあげるパターンへ
シフトしていけますように。

