昔の失敗をふと思い出して苦しくなるときの、「あの頃の自分」との付き合い方

心を軽くするヒント

ふとした瞬間に、昔の失敗や恥ずかしい出来事を思い出して、胸のあたりがキュッとなることがあります。
「もう終わったことなのに」「忘れたいのに」と思うほど、余計に頭から離れなくなってしまう——そんな経験は、多くの人が持っています。

この記事では、

  • なぜ、過ぎたはずの出来事がいまでも苦しくよみがえるのか
  • 「忘れよう」とするほど苦しくなる理由
  • 記憶を消そうとするのではなく、「あの頃の自分」と付き合い方を変えていく考え方
  • 具体的なワークや、思い出してしまった瞬間の対処法
  • それでも消えない後悔と、これからの自分をどうつなげていくか

を、少しずつほどきながら考えていきます。

ポイントは、

・失敗の記憶は「今の自分を責める材料」にしなくていい
・あの頃の自分を、今の自分が少しずつ“味方側”に引き取っていく

という視点です。

全部を一度に変えようとしなくて大丈夫です。
読んでいく中で、「このフレーズだけ心に置いてみよう」「このワークだけやってみよう」と思えた部分があれば、それだけで十分だと思います。


  1. ふと思い出す「あの場面」に、なぜこんなに苦しくなるのか
    1. 忘れたつもりなのに、急に再生される記憶
    2. 脳は「危険だったこと」をよく覚えている
    3. 「忘れたい」と思うほど、強く残ろうとする
  2. 「あの頃の自分」を、今の自分と切り離してみる
    1. 過去の自分=「今の自分」とは別の人
    2. 一人の登場人物として眺めてみる
  3. 記憶を消そうとしない。「意味のつけ方」を少し変えてみる
    1. 「失敗=黒歴史」と決めつけると、苦しさが続く
    2. できるだけ小さくてもいいから、「別の意味」を探してみる
  4. 「あの頃の自分」と付き合い方を変えるための、ゆるいワーク
    1. ワーク①:三つの視点で、その出来事を書いてみる
      1. 1. 当時の自分の視点
      2. 2. 今の自分の視点
      3. 3. 第三者の視点
    2. ワーク②:「そのときの制約リスト」を作る
    3. ワーク③:「あの頃の自分」に手紙を書いてみる
  5. 思い出してしまった“その瞬間”にできる小さな対処法
    1. ① 「今何が起きたか」を一行で言葉にする
    2. ② からだを現実に戻す
    3. ③ 「今の自分なら、どう動くだろう?」を1フレーズだけ考える
  6. 過去をやり直すことはできないけれど、「これから」を変えることはできる
    1. 同じパターンに出会ったときの「小さな選択」を変えてみる
    2. 過去の自分を、未来の自分にとっての「素材」にしていく
  7. それでも苦しさが強いときに、考えてほしいこと
    1. 「許す」は、急いで目指さなくていい
    2. 一人で抱えるのが難しいと感じたら
  8. おわりに:「あの頃の自分」を、少しだけ味方に引き寄せていく

ふと思い出す「あの場面」に、なぜこんなに苦しくなるのか

忘れたつもりなのに、急に再生される記憶

昔の失敗を思い出すタイミングは、だいたい「今はそこまで切羽詰まっていない瞬間」に現れます。

  • お風呂に浸かっているとき
  • 布団に入って、スマホを置いた直後
  • 電車の中でぼんやりしているとき
  • 仕事の区切りがついて、少し息をついたとき

頭がヒマになったとたん、
「そういえば、あのときあんなこと言っちゃったな」
「なんであんな行動をしたんだろう」

と、まるで動画を再生するみたいに、細かい場面までよみがえってくることがあります。

思い出した瞬間、身体はかなり正直です。

  • 顔が熱くなる
  • 胸のあたりがギュッとする
  • ため息が出る
  • 「あーーー!」と声にならない声を飲み込みたくなる

ここまで反応が大きいと、
「もう何年も前のことなのに、いつまで引きずってるんだろう」と、自分にあきれてしまうかもしれません。

脳は「危険だったこと」をよく覚えている

でも、これには脳のクセも関係しています。

私たちの脳は、

  • 嬉しかったこと
  • 何でもなかった日常

よりも、

  • 恥ずかしかったこと
  • 怒られたこと
  • 危なかったこと

など、「危険かもしれない」と判断した出来事を、強く・くっきり保存しやすいと言われます。

それはもともと、

「同じ危険をまた繰り返さないように」

という、生き延びるためのしくみでもあります。

つまり、昔の失敗を何度も思い出してしまうのは、

「忘れるなんて危ない。ちゃんと覚えておきなさい」

と、脳が真面目に仕事をしている結果でもあるんですね。

「忘れたい」と思うほど、強く残ろうとする

さらにやっかいなのは、

「忘れたい」と強く思うほど、その記憶が“特別扱い”されてしまう

ということ。

  • 「あのことだけは、思い出したくない」
  • 「考えたくないのに、勝手に浮かんでくる」

と、特定の記憶を「特別な存在」にしてしまうと、
脳はそれを“重要なデータ”だと判断して、余計に手放そうとしなくなります。

その結果、

  • 忘れようとする
  • 余計に気になる
  • また思い出して落ち込む

というループに入りがちです。

ですから、

「思い出してしまう自分」を責めるのではなく、
「それくらい強く残る出来事だったんだな」と認めるところから

付き合い方を変えていく必要があります。


「あの頃の自分」を、今の自分と切り離してみる

過去の自分=「今の自分」とは別の人

昔の失敗を思い出して苦しくなるとき、
頭の中ではだいたい次のような会話が起こっています。

  • 「なんであんなことしたんだろう」
  • 「あのときの自分、本当に最低だった」
  • 「もっとこうできたはずなのに」

ここには、暗黙の前提がひとつあります。

「あの頃の自分も、今の自分も、同じレベルで判断されるべき」

という前提です。

でも実際には、

  • 知っていること
  • 経験してきたこと
  • 周りの状況
  • 体力・メンタルの状態

どれを取っても、「あの頃」と「今」はかなり違っています。

本当は、

「別の情報を持った、別の条件の人」

を、一つの物差しで裁いているようなものなのですね。

一人の登場人物として眺めてみる

そこでおすすめしたいのが、

「あの頃の自分」を、一人の登場人物として眺めてみる

という視点です。

たとえば、ドラマや小説の一場面を思い浮かべるようにして、
こんなふうに言い換えてみます。

  • 「あのときの“あの人”(=過去の自分)は、こういう状況だった」
  • 「あの人は、あそこで精一杯の選択をしたんだな」

視点を少し離すことで、

  • 「バカだった」という一言で片づけるのではなく、
  • 「あの条件の中で、何を知っていて、何を知らなかったのか」

が見えやすくなります。

もちろん、今の自分から見れば「もっとマシなやり方」はたくさん浮かぶかもしれません。
でもそれは、

「今だから分かる答え」

であって、

「当時の自分にも、当然分かっていてほしかった答え」

とは限らないはずです。


記憶を消そうとしない。「意味のつけ方」を少し変えてみる

「失敗=黒歴史」と決めつけると、苦しさが続く

私たちはつい、過去の出来事に「一言ラベル」を貼りたくなります。

  • あれは黒歴史
  • 消えてなくなりたい思い出
  • 思い出すたびに嫌になる出来事

たしかに、そのくらい痛かった出来事だからこそ、今でも苦しくなるのだと思います。

でも、ラベルを一度「完全な悪」にしてしまうと、
そこから何かを受け取る余地がなくなってしまいます。

「あの失敗は、何の役にも立っていない」
「あのときの自分には、何の救いもない」

という見方は、
過去の自分だけでなく、「今の自分」にもダメ出しを続けることにつながります。

できるだけ小さくてもいいから、「別の意味」を探してみる

ここで、少しだけ視点を変えてみます。

「あの出来事には、“あれ以外に”どんな意味があっただろう?」

と、問いを立て直してみるのです。

たとえば、

  • あの失敗があったから、人の痛みに敏感になった
  • 同じことで悩んでいる人を見たとき、「分かる」と言える
  • 自分にとっての「これだけはもうしたくない」というラインが分かった
  • 無理をしすぎるとどうなるか、身をもって知った

こうして挙げた意味は、
決して「失敗して良かった」と言い換えるためのものではありません。

そうではなく、

「あの出来事は、私にとって“それだけ”ではなかったかもしれない」

という余白を作るためのものです。

記憶そのものは消えなくても、
そこにくっついている“タグ”を少し書き換えることはできる、というイメージです。


「あの頃の自分」と付き合い方を変えるための、ゆるいワーク

ここからは、実際にやってみられるワークをいくつか紹介します。
紙でもスマホのメモでも、頭の中だけでも構いません。

ワーク①:三つの視点で、その出来事を書いてみる

一つの失敗について、

  1. 当時の自分の視点
  2. 今の自分の視点
  3. 第三者(やや優しめな大人)の視点

の三つに分けて書いてみます。

1. 当時の自分の視点

  • どんな状況だったか
  • どんな前提で動いていたか
  • 何を期待していたのか
  • 何を知らなかったのか

「言い訳」でも「正当化」でもなく、
そのときの自分の中にあったものを書き出してみます。

2. 今の自分の視点

  • いま振り返ると、「こうしたほうがよかった」と思うところ
  • 実は、周りの人の立場にもなれるようになってきたところ
  • あの出来事が、自分に残している影響(良い面も、しんどい面も)

ここでは、「反省」を細かくしすぎないことも大事です。
大切なのは、

「今の自分が、その出来事をどう理解し直しているか」

を知ることです。

3. 第三者の視点

少し想像力を使って、

  • 数年先の自分
  • 同じ経験をした友人
  • 少し年上の、信頼できる誰か

になりきって、その出来事とあなた自身を見てみます。

  • 「あの状況で、その年齢で、そこまで抱え込んでいたのか」
  • 「よくあそこから今ここまで来たな」
  • 「たしかに失敗だったけれど、一方でこういう面もあったよね」

と、“自分以外の誰か”がコメントしているように書いてみると、
今までとは少し違う見え方が出てくることがあります。


ワーク②:「そのときの制約リスト」を作る

失敗を思い出して自分を責めてしまうとき、
私たちはたいてい「前提」の存在を忘れています。

  • あのときの自分は、何を知らなかったか
  • どんな事情・制約があったか
  • どんなプレッシャーの中にいたか

これらを書き出して、「そのときの制約リスト」を作ってみます。

例:

  • 最初の職場で、右も左も分からなかった
  • 周りに相談できる人がいなかった
  • 断ったり、NOを言う練習をしたことがなかった
  • 家庭や健康の悩みも重なっていた

これを見ると、

「今の自分」が想定している「理想的な動き方」を、
「当時の自分」に求めるのは少し酷かもしれない

という感覚が、少しずつ湧いてきます。


ワーク③:「あの頃の自分」に手紙を書いてみる

定番の方法ですが、とても力を持っているワークです。

ポイントは、「説教の手紙」にしないこと。

「なぜあんなことをしたの?」
「もっとこう動くべきだったでしょ?」

ではなく、

  • そのときの自分が、何に怯えていて
  • 何を大事にしたくて
  • どこで無理をしていたのか

に目を向けながら書いてみます。

たとえば、こんな始まり方でも構いません。

「あのときの私へ。
いまの私は、あの場面を何度も思い出しては苦しくなっている。
でも最近ようやく、『あのときの自分も、あの状況の中で精一杯だったのかもしれない』と思えるようになってきた。」

そこから、

  • 「あのとき、こんなことが怖かったよね」
  • 「こうしなきゃいけないと思い込んでいたよね」
  • 「あのあと、こんなふうに生きてきたよ」

と、「今の自分」が少し年上の先輩として語りかけていきます。

書き終えるころには、
あの頃の自分に向けていた視線が、
ほんの少しだけ緩んでいるかもしれません。


思い出してしまった“その瞬間”にできる小さな対処法

ワークをすると同時に、
日常で「ふとよみがえって苦しくなった瞬間」にできる対処も用意しておくと、少し安心です。

① 「今何が起きたか」を一行で言葉にする

胸がギュッとなった瞬間、
できれば心の中で、こう言葉にしてみます。

「今、あのときのことを思い出してつらくなっているな」

これは、感情と自分との間に、ほんの少しだけ距離を置くための一歩です。

  • 「私はダメだ…」と自分を責めるモードから
  • 「今、“思い出し苦しみ”が起きている」という観察モードへ

一段階だけ、視点を上げるイメージです。

② からだを現実に戻す

頭の中が過去の映像でいっぱいになったら、
からだを「今ここ」に引き戻す簡単な行動をしてみます。

  • 近くにあるものを、意識してゆっくり触る(マグカップ、布団、服の端など)
  • 深呼吸を一回だけ、「息を吐くほう」を長めにやってみる
  • 足の裏をぎゅっと床につける感覚を確かめる

これは、
「頭の中の世界」から「今の現実」に戻るための小さな橋渡しです。

③ 「今の自分なら、どう動くだろう?」を1フレーズだけ考える

余裕があれば、その場面について、

「今の私なら、どうしていただろう?」

と一言だけ考えてみます。

  • 「あのときより、少しマシな選択肢が思いつくようになったな」
  • 「あの状況なら、今の私でもきっと戸惑う」

どちらの答えでもかまいません。

大事なのは、

「あの頃の自分と、今の自分は違う」

という実感を、少しでも取り戻すことです。


過去をやり直すことはできないけれど、「これから」を変えることはできる

昔の失敗を思い出したとき、
忘れたくなるのはもちろんですが、
どこかでこんな気持ちも潜んでいるかもしれません。

  • 「あのときちゃんとしていれば、今の自分はもっとマシだったはず」
  • 「あの失敗がなければ、こんな性格にならなかったかもしれない」

たしかに過去の出来事は、今の自分に影響を与えています。
でも同時に、

「今からどう行動するか」も、これからの自分に大きく影響していきます。

同じパターンに出会ったときの「小さな選択」を変えてみる

例えば、昔の失敗が

  • NOと言えなかった
  • 無理をしすぎた
  • 人に合わせすぎた

ことから起きているなら、
今、少し似た状況に出会ったときに、

  • 「今日は一歩手前で断ってみる」
  • 「体調が気になるときは、早めに帰る選択をしてみる」

といった、ごく小さなレベルで、選択を変えてみる。

それは、過去のやり直しではありません。

「あのときの自分と同じ条件で、同じ選択を繰り返さないように、今の自分が舵を少し切っている」

ということです。

過去の自分を、未来の自分にとっての「素材」にしていく

失敗の記憶を完全に消すことはできません。
でも、その記憶を、

  • 自分を責める材料
  • 自信を削る材料

だけとして扱ってしまうのか、

  • 次に似た状況で、少しだけマシな選択をするための素材
  • 同じことで悩んでいる人に寄り添える、背景のひとつ

として扱うのかで、
これから先の自分への影響は変わっていきます。

「あの頃の自分は、今の自分の“材料”の一部になっている」

と見られるようになると、
苦い記憶は苦いままでも、
心の中で置かれている位置が少しずつ変わっていきます。


それでも苦しさが強いときに、考えてほしいこと

ここまで読んでも、
「それでも、あの出来事だけはどうしても苦しい」
というケースもあると思います。

  • 誰かを深く傷つけてしまった
  • 取り返しのつかないことをしてしまったと感じている
  • 今の人間関係や仕事にも、まだ影響が続いている

そんなときに、
「前向きに考えよう」「意味づけを変えよう」という言葉は、かえって重く感じられるかもしれません。

「許す」は、急いで目指さなくていい

よく、「自分を許そう」「相手を許そう」という表現がありますが、
これは段階としては、かなり後のほうのステージです。

まだ心の中がヒリヒリしているうちから、

  • 「許さなきゃ」
  • 「前向きにならなきゃ」

と自分にプレッシャーをかけると、
余計に苦しくなってしまいます。

まずは、

「今の自分は、まだそこまで行けていない」

という事実を、そのまま認めること。

「癒し」や「許し」に向かうプロセスは、
人によってスピードもルートも違って当たり前です。

一人で抱えるのが難しいと感じたら

もしも、

  • 思い出す頻度がとても多い
  • 日常生活や睡眠に支障が出ている
  • 自分を責める気持ちが強すぎて、誰にも話せない

という状態が続いているなら、
一人で抱え続けるより、誰かと一緒に持ってもらうことも大切です。

  • 信頼できる友人や家族
  • カウンセリング
  • 必要であれば専門の医療機関

「こんなことで相談してもいいのかな」と思うような内容でも、
話してみることで、
少しずつ「自分の中だけの真実」から「他の人と共有できる現実」へと変わっていきます。


おわりに:「あの頃の自分」を、少しだけ味方に引き寄せていく

昔の失敗を思い出して苦しくなるとき、
私たちはだいたい、「あの頃の自分」に対して一番厳しい裁判官になっています。

  • 「あれはありえない」
  • 「普通はあんなことしない」
  • 「だから今もこうなんだ」

そんなふうに、
一度も言い分を聞かないまま、ずっと判決を出し続けてきたのかもしれません。

でも、
あの頃の自分はあの頃の自分なりに、

  • その場をなんとかしようとしたり
  • 誰かを守ろうとしたり
  • 自分の限界の中で選んだり

していたのかもしれません。

もちろん、それで結果がうまくいかなかったからこそ、
今こうして苦しく思い出しているわけですが、

「あのときの私に、まったく理解できる部分がないわけじゃない」

と気づけたら、
その瞬間から、少しだけ関係は変わり始めます。

今日、このテーマについて読んだ時間そのものが、
すでに「あの頃の自分」と向き合う一歩です。

  • 一つワークをやってみる
  • 思い出して苦しくなった瞬間の対処を、ひとつだけ試してみる
  • 「あのときの私は、本当にダメだった」から、「あのときの私は、あのときの条件の中で精一杯だった」に、ほんの1ミリだけ言い換えてみる

そんな小さな一歩を積み重ねながら、

「あの頃の自分がいたからこそ、今の自分がここにいる」

と、いつか少しだけ思える日が来たらいいなと思います。

その日までの間、
「あの頃の自分」との距離を、少しずつ自分のペースで調整していけますように。

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