Z世代と一緒に働く40代の多くが、どこかでこう思っています。
「ちゃんと分かり合わないと、チームはうまくいかないんじゃないか」
「価値観の違いを埋めないと、指導もマネジメントも難しい」
でも現場で起きているのは、
「分かり合おう」とすればするほど、お互いが疲れてしまう現実です。
- 「最近の若い子の考え方を理解しなきゃ」と無理をする40代
- 「分かってもらおう」と一生懸命説明するZ世代
- それでもどこかズレて、「結局、分かり合えない」というモヤモヤだけが残る…
この記事では、
- なぜ「分かり合おうとしすぎる」と、かえって関係がぎくしゃくするのか
- 「完全に分かり合う」ことより大切な、現場での“ちょうどいい距離感”とは何か
- 40代が先に手放していい3つの思い込み
- 明日から試せる、Z世代と一緒に働くときの具体的なスタンス・声かけ・接し方
- 「違いがあるからこそ、一緒に働ける」状態をつくる考え方
を、落ち着いた視点で整理していきます。
ポイントは、
・世代ギャップを「埋める」のではなく「前提にしたうえで、どう一緒に進むか」を考える
・「完全に分かり合う」より、「大事なところだけ共有できればOK」と線引きする
ことです。
「分かり合えないとダメだ」という重さを少し下ろして、
「分かりきれない部分があっても、一緒にちゃんと仕事はできる」
そんな視点を持ち帰ってもらえたらうれしいです。
「分かり合わなきゃ」が40代を苦しくする理由
まずは、なぜ「分かり合おうとしすぎる」としんどくなるのかを整理してみます。
40代側にある、見えないプレッシャー
多くの40代は、こんな空気の中で働いています。
- 「中堅〜ベテラン」として、若手の模範にならなければ
- マネジメントや育成の役割も担うべき
- Z世代の価値観も理解して、時代に合わせていかないと取り残される
これ自体は間違っていないのですが、
真面目な人ほど、こう変換してしまいがちです。
「ちゃんと分かり合えないのは、自分の勉強不足・理解不足だ」
結果として、
- 若手の言動にモヤッとしても、「自分の考えが古いのかも」と飲み込む
- 違和感があっても、「これくらい受け入れないと」と我慢する
- 本音を出せず、「なんか疲れる」状態が溜まっていく
ということが起きます。
そもそも「分かり合う」には限界がある
世代に限らず、人と人が「完全に分かり合う」ことは、本来かなり難しいものです。
- 育ってきた環境
- 見てきた景色
- これまでの経験
- 大事にしている価値観
これらは、一人ひとり違います。
Z世代と40代の間には、さらに
- テクノロジーとの付き合い方
- 就職・転職市場の状況
- コロナ禍をどう経験したか
- 働くことへの期待・諦め方
といった違いも重なります。
この前提を忘れたまま、
「ちゃんと分かり合えるはずだ」
「分かり合えないのは、自分か相手のどちらかが悪いからだ」
と考えると、お互いにとって苦しいゴール設定になってしまいます。
「全部わかろう」とすると、境界線があいまいになる
「分かり合おうとしすぎる」と、
- 相手の価値観に必要以上に合わせてしまう
- 相手のプライベートや本音に踏み込みすぎてしまう
- 仕事上の役割と、個人としての距離感がごちゃごちゃになる
ということが起こりがちです。
結果として、
- 上司/先輩なのに、なめられたように感じる
- 何でも聞いてあげる“相談窓口”になってしまい、疲弊する
- 逆に、急に線を引きたくなって冷たくしてしまう
と、振れ幅の大きい関係になりやすくなります。
Z世代は本当に“特別な世代”なのか
次に、よく語られる「Z世代像」について、少し落ち着いて見てみます。
ラベルに引っ張られすぎると、本質を見失う
メディアやSNSでは、Z世代についてこんな特徴が語られがちです。
- 「タイパ重視・コスパ重視」
- 「すぐに辞める・見切りが早い」
- 「自己肯定感が低い/高い」
- 「承認欲求が強い」
しかし、実際には、
- Z世代の中にも、どっしり腰を据えて働きたい人もいれば、軽やかに動きたい人もいる
- 20代でも、家庭の事情・健康・地域など、さまざまな制約を抱えている人がいる
- 「自己肯定感が低い」のは世代の問題だけでなく、組織文化や教育の影響も大きい
といったように、一括りにはできません。
ラベルに引っ張られすぎると、
「Z世代だからこうだよね」と決めつける
「Z世代だから、こう理解しなきゃ」と自分を縛る
どちら側にも偏ってしまいます。
「違い」そのものより、「違いにどう反応するか」が大事
Z世代と40代のあいだに“違い”があるのは、ある意味当たり前です。
- 40代にとっては、「空気を読む」「我慢する」が当たり前だった場面でも、
- Z世代にとっては、「相談する」「嫌と言う」ほうが自然な場面かもしれない
逆もまた然りです。
本当に大事なのは、
・違いそのものをゼロにすることではなく
・その違いに直面したとき、「どう反応するか」のパターンを増やすこと
です。
だからこそ、この記事のテーマは、
「完全に分かり合う」ではなく
「分かり合おうとしすぎない」ことで、かえってうまくいく理由
を探る、という形にしています。
「分かり合う」より「分かり方を選ぶ」にシフトする
ここからは発想の転換です。
「全部わかろう」とするより、「どこまで分かれば十分か」を決める
たとえば、Z世代の部下や同僚に対して、
- 生き方の価値観まで100%理解しようとする
- プライベートの考え方や人生観まで分かろうとする
のは、正直かなり大変です。
そこで、「仕事を一緒に進めるうえで、どこまで分かれば十分か?」に絞り込んでみます。
たとえば、こんなラインです。
- 仕事に対する基本的なスタンス(成長したい/無理せず続けたい 等)
- 得意・苦手の方向性(人前で話すのは苦手/資料作成は得意 等)
- 働くうえでのNGライン(残業が続くのはきつい/お客様対応が苦しい 等)
- どんなフィードバックなら受け取りやすいか(まずは良かった点から、など)
そこが共有できていれば、
価値観が全部同じでなくても、仕事はちゃんと回ります。
「共感」より、「納得できるルール」を一緒につくる
分かり合おうとしすぎると、
「相手の気持ちに共感しなければいけない」
という思い込みになりがちです。
でも、仕事の現場では、
- 気持ちとしては共感しきれなくても
- 「こういうルールでやっていこう」と決められれば
十分に機能する場面も多いものです。
たとえば、
「正直、自分の20代のときとは考え方が違うけれど、
チームとしては、ここは守ってほしい。
その代わり、この部分は自由にやっていい」
というように、
- 共感(好き・嫌い)
- ルール(どう動くか)
を分けて話すことで、
「気持ちは100%同じじゃないけれど、やることは決められる」という状態をつくりやすくなります。
40代が先に手放していい3つの思い込み
ここからは、40代側が少しだけ肩の力を抜くために、
手放していい思い込みを3つ挙げます。
1. 「理解できない=指導失敗」という思い込み
若い世代を理解しようとする姿勢は、とても大切です。
ただし、
「理解できない部分=自分の指導の失敗」
とまで考える必要はありません。
人間同士である以上、
- 分かる部分
- どうしてもピンとこない部分
があるのは自然です。
「ここはまだよく分からないけれど、
それでも一緒に仕事はできる」
と認めることは、
決して投げやりではなく、むしろ現実的なスタンスです。
2. 「自分が若いころはこうだったべき」論
40代がつい言いたくなるフレーズに、
- 「自分たちの頃はこうだった」
- 「当時はそんなこと言えなかった」
があります。
それ自体は、その人なりのリアルな体験です。
ただ、それを“唯一の正解”として若い世代にぶつけると、
- Z世代:「じゃあ、自分たちは何を言っても否定されるんだな」
- 40代:「何を話しても通じない」と感じてしまう
という、行き違いを生みます。
「自分の20代のときはこうだった。
でも今は状況も違うから、“今なりのやり方”も一緒に考えたい」
と、過去を「比較の物差し」ではなく「一つの事例」として話せると、
会話のトーンはかなり変わっていきます。
3. 「全部教えられないといけない」完璧さ
中堅〜ベテランとして、
- 質問には全部答えなければ
- ロールモデルとして隙を見せてはいけない
と思う人も多いかもしれません。
けれど、Z世代の多くはむしろ、
「分からないことを分からないと言ってくれる大人」
「一緒に考えてくれる先輩」
に安心感を覚えることが多いです。
「それは自分も悩むところなんだよね。
こう考えているけれど、一緒にどうするか考えようか」
というスタンスは、
「完璧な答え」はくれなくても、
「一緒に考えてくれる大人」としての信頼につながります。
一緒に働くときの具体的なスタンスと声かけ
ここからは、明日から使えるレベルの具体的な関わり方を整理します。
1. 最初に「前提」を共有しておく
新しく一緒に仕事をするZ世代のメンバーとは、
最初のタイミングで「前提」を軽く共有しておくと、ズレが減ります。
たとえば、こんな3点です。
- 仕事で大事にしたいこと
- 「自分はこういうところを大事にして働いている」
- 「スピードより正確さを重視したい/その逆」など
- コミュニケーションの取り方
- 「報連相はチャットでもOK」
- 「迷ったら早めに聞いてほしい」
- 「細かいことでも、気になることは言ってもらえると助かる」
- お互いのNGライン
- 「ここを破ると、お互いしんどくなる」というライン
- 例)「無断で締切を超えるのは困る」「体調が悪いときは遠慮なく言ってほしい」など
- 「ここを破ると、お互いしんどくなる」というライン
これを対話の中でさらっと共有しておくと、
「この人はこういう人なんだ」
「このくらい聞いていいんだ」
という“安心の枠”ができて、
余計な探り合いが減ります。
2. 感情より「事実」から話す
世代ギャップを感じたときほど、
感情的な言葉(イライラ・モヤモヤ)ではなく、
「事実」をベースに話すのが有効です。
NG例:
「なんでそんなに責任感がないの?」
OK例:
「昨日の◯◯の件、締切が◯時だったけれど、連絡がなかったよね。
チームとしては、そこだけは守ってほしい。
難しそうなときは、前の日に一言もらえると助かる。」
こうすると、
- 相手も「どこが問題だったのか」が分かりやすい
- 「自分の人格」ではなく「行動」の話にできる
- 世代の問題ではなく、仕事のルールの話として整理しやすい
というメリットがあります。
3. フィードバックは「短く・具体的に・両面」で
Z世代に限らずですが、
フィードバックは次の3点を意識すると、受け取りやすくなります。
- 短く:ダラダラ説教しない
- 具体的に:「ちゃんと」「もっと」ではなく、何がどう良かった/課題だったのか
- 両面で:良かった点と、改善点の両方を伝える
例:
「今回の資料、◯◯の情報をしっかり調べてくれていて助かった。
そのうえで、会議で使うから、次は“結論と一番伝えたいポイント”を最初の1ページにまとめてくれるとさらに良くなると思う。」
「ダメ出しだけ」でもなく、「ほめるだけ」でもなく、
両方がセットになっていると、
40代からの言葉は「評価」ではなく「伴走」に近づいていきます。
距離感の取り方:線を引くのではなく、余白をつくる
「分かり合おうとしすぎない」ためには、
冷たく線を引くことではなく、
お互いがラクでいられる「余白」を意識することが大事です。
1. 「仕事の話」と「人生観の話」を混ぜすぎない
Z世代と話していると、
人生観や価値観の話になることもあります。
- 「仕事以外の時間も大事にしたい」
- 「お金より自由を優先したい」
- 「正社員にこだわらなくてもいいかもしれない」
それを聞いて、40代がモヤッとすることもあるでしょう。
そのとき、
「いや、仕事というのはね…」
と人生論をぶつけてしまうと、お互いの世界がぶつかりやすくなります。
そこで、
- 仕事のルール・期待値については、きちんと伝える
- 仕事観・人生観については、「それも一つの考え方だね」と受け止めつつ、無理に合わせようとしない
という“二段構え”を意識してみます。
「その考え方も分かるよ。
ただ、今このプロジェクトでは、こう動いてほしい。
その理由は◯◯だから。」
こう言えると、
人生観を無理に揃えなくても、
仕事のラインは共有できます。
2. 「全部相談に乗る」から「必要なときに相談できる関係」へ
面倒見のいい40代ほど、
- 仕事の悩みも
- 将来の不安も
- プライベートのモヤモヤも
全部聞いてあげようとして、疲れてしまうことがあります。
役割としては、
「いつも話を聞く相手」ではなく
「必要なときに頼れる大人の一人」
くらいが、ちょうどいいことも多いです。
- 自分の負荷が高すぎると感じたら、「このテーマは、この人に聞いてみるといいよ」とパスを出す
- 聞けるときは聞くけれど、常に即レス・即対応はしない
そんな“余白”があるほうが、
長く関係を続けやすくなります。
Z世代から学べること、40代だからこそ渡せるもの
最後に、「分かり合おうとしすぎない」前提に立ったうえで、
お互いにとってのプラスを整理しておきます。
Z世代から、40代が受け取れるもの
- 変化を前提としたキャリア観
- デジタルツールやSNSの活用センス
- 「無理なものは無理」と言葉にする勇気
- 多様性を当然のものとして受け止める感覚
これらは、40代の経験や枠組みと組み合わさることで、
チームの可能性を広げてくれます。
40代だからこそ渡せるもの
- 長期戦の経験値(キャリアも、人生も一発勝負ではないこと)
- 困難な状況での「こうすれば何とかなるかも」という引き出し
- 「こういうやり方をすると結局しんどくなる」という失敗談
- 目先の損得だけではない、「続けてきたからこそ見えるもの」
これらは、Z世代にとっての「未来のかたち」の一例になります。
「完全に分かり合えなくても、
お互いに何か受け取れるものがある」
そう思えると、「世代」というラベルの距離は、少しだけ近づきます。
おわりに:完全に分かり合わなくていいから、一緒に働ける
Z世代と一緒に働く40代にとって、
一番しんどいのは、
「分かり合わなきゃいけない」
「理解できない自分はダメだ」
と、自分を追い込んでしまうことかもしれません。
この記事でお伝えしたかったのは、
- 世代ギャップは「埋めるもの」ではなく、「前提にして付き合い方を工夫するもの」
- 「完全に分かり合う」ことをゴールにしなくても、十分いいチームはつくれる
- むしろ、「分かり合おうとしすぎない」ことで、お互いラクになれる
という視点です。
今日からできる小さな一歩は、たとえばこんなことかもしれません。
- 「全部分かろう」と力を入れすぎていた自分に気づくこと
- Z世代の部下や同僚と、「仕事で大事にしたいこと」を一度だけ話してみること
- 違和感を覚えたとき、「自分の若いころとは違うだけかもしれない」と一呼吸おくこと
分かりきれない部分があっても、
一緒に仕事はできます。
その前提に立ったうえで、
少しずつ、「お互いにとって心地よい距離感」を探していけますように。

