理不尽な上司のもとで働いていると、仕事そのものよりも
「自分はダメな人間なのかもしれない」
「何をやっても怒られる気がする」
という感覚に、じわじわ心を削られてしまいます。
上司の機嫌・好み・思いつきで評価が変わる環境にいると、
いつの間にか「自分のものさし」よりも、「上司のものさし」のほうが強くなり、
自分の感覚がどんどん信じにくくなっていきます。
この記事では、
- なぜ理不尽な上司のもとだと、自分の評価軸が壊れやすいのか
- 「上司の評価」と「自分の評価軸」を切り離して考えるためのヒント
- 日々の仕事の中で、自分なりの誇りや価値を確認し直すシンプルな方法
- 理不尽さに飲み込まれないための「心理的距離」のとり方
- それでも限界を感じたときの、中長期的な「出口戦略」の考え方
を、ゆっくり整理していきます。
目標は、
「理不尽な上司を好きになること」でも
「すべてを我慢し続けること」でもなく、
上司がどうあれ、「自分はこういう仕事をしている」と胸の内側で言える軸を取り戻すこと。
読みながら「これはできそう」というところだけ拾ってもらえたら十分です。
一気に変えなくて大丈夫なので、まずは心の中に、小さな安全地帯をつくるイメージで読んでみてください。
理不尽な上司のもとだと、なぜ「自分のものさし」が壊れやすいのか
まずは、どうしてここまで自分の評価軸が揺らぎやすいのかを、やさしい目線で言葉にしてみます。
理不尽な上司には、たとえばこんな特徴があるかもしれません。
- 気分で態度や評価が変わる
- 同じことをしても、好きな人には甘く、嫌いな人には厳しい
- 指示があいまいなのに、結果がイメージと違うと激しく責める
- 昨日と言っていることが今日変わる
- ミスの原因を一緒に考えるのではなく、個人攻撃になる
こうした環境で働いていると、毎日が「地面のぐらつく足場」の上にいるようなものです。
「正しさ」ではなく「機嫌」に振り回されるつらさ
本来、仕事の評価はできるだけ「事実」「成果」「プロセス」に基づいてほしいものです。
ところが理不尽な上司のもとでは、
- 「やったこと」よりも、そのときの「上司の機嫌」が優先される
- 「論理」よりも、「好み」や「思い込み」で判断される
といったことが多くなります。
そうなると、部下側は、
「何がよくて何が悪かったのか」が見えなくなる
結果的に、「次にどう改善すればいいのか」も分からなくなり、
ただただ「怒られないように」動くようになってしまいます。
自分の感覚よりも、「上司の言葉」のほうが強くなる
理不尽な上司の言動は、たいてい言葉が強いものです。
- 「なんでこんなこともできないんだ」
- 「普通はこうするだろ」
- 「君は本当につかえない」
- 「あの人と比べて意識が低い」
繰り返し強い言葉を浴びていると、
- 自分の中では「ここはうまくやれた」と思った仕事でも、
→「いや、でも上司はダメだと言っていた」と自分の感覚を引っ込めてしまう - 「この判断はおかしいのでは」と感じていても、
→「私がおかしいのかな」と自分を疑うクセがつく
こうして少しずつ、自分の評価軸が削れていきます。
「自分にも悪いところがあるから」と全部引き受けてしまう
真面目で責任感がある人ほど、
- 「たしかに自分にも改善点はあるし…」
- 「100%あの人だけが悪いとは言えないし…」
と考えます。
その姿勢自体はとても成熟しているのですが、
理不尽な上司のもとでは、
「上司の理不尽さ」+「自分の反省」
を全部自分の背中に背負ってしまいがちです。
結果として、
・上司が不機嫌なのも
・組織の都合の悪さも
・周りの体制の問題も
「自分の至らなさ」のように感じてしまい、
自己評価が大きく歪んでいきます。
「上司の評価」と「自分の評価軸」を分けて考えるという発想
ここから大事になってくるのは、
「上司の評価」と「自分の評価軸」を、同じものとして扱わない」 というスタンスです。
それは、上司の意見を全部無視していい、ということではありません。
大まかに言うと、
- 上司の評価=「会社の中でどう見られているか」という、ひとつの視点
- 自分の評価軸=「自分の仕事をどう見たいか」という、もうひとつの視点
と分けて持っておくイメージです。
視点を「1つ」しか持っていないと、すべてがその色に染まる
もし、上司のものさししか持っていなければ、
上司に怒られる=自分は価値がない
上司に褒められない=自分はダメ
という二択になってしまいます。
でも、本来の世界はもっと多層的です。
- 同僚からの信頼
- お客様からの言葉
- 自分自身が「ここは大事にしたい」と思ってやっていること
- 将来に向けてコツコツ続けている学びや工夫
こうしたものは、
一人の上司の機嫌や主観だけでは測り切れません。
「別のものさし」を増やしていく
だからこそ、理不尽な上司のもとで働きながらも、
「ここではこう言われるけれど、別の見方もある」
という感覚を持っておくことが、とても大切です。
たとえば、
- 「上司の評価シート」だけでなく、「自分の評価シート」を持つ
- 仕事の振り返りを、「上司視点」「自分視点」の2種類で書いてみる
- 一緒に働いている同僚・他部署・お客様の反応も、「もう一つの尺度」として意識する
こうやって少しずつ“別のものさし”を増やしていくことで、
上司の評価が全て、という状態から、
「上司の評価は、たくさんある視点の一つ」という状態へと、心の距離を変えていけます。
ノートを使って、「自分の評価軸」を言葉にしてみる
自分の評価軸を守るためには、
「自分はどういう仕事をしたいのか」「どんな姿勢を大事にしているのか」を、
一度きちんと文字にしてみることが役に立ちます。
ステップ1:仕事で「大事にしていること」を3〜5つ書き出す
ノートでもスマホでもいいので、次の問いを書いてみます。
「私は、仕事をする上で、どんなことを大事にしたいと思っているだろう?」
そして、思いつくままに箇条書きしてみてください。
例:
- 約束した期限はできるだけ守りたい
- 分からないことをそのままにせず、ちゃんと確認したい
- 相手が次に動きやすいように、情報を整理して渡したい
- 後から困ることがないように、リスクを先に見ておきたい
- 誰か一人だけに負担が偏らないように、できる範囲で声をかけたい
ここで書いたものは、
上司に認められるかどうかとは関係なく、
「自分にとっての“良い仕事”の条件」
です。
ステップ2:「それができた日」と「できなかった日」を、たまに振り返る
そのうえで、週に1回でもいいので、次のように振り返ってみます。
- 今週、「自分の大事にしたいこと」ができた場面はあったか
- 逆に、「本当はこうしたかったけれど、できなかった」と感じた場面はあったか
上司に怒られたかどうかとは別に、
「自分のものさしで見て、これは良かった/惜しかった」
と判断してみることが大切です。
たとえ上司に理不尽に責められた日でも、
- 自分なりには、できる準備をしていた
- 相手への伝え方は、前よりも落ち着いてできた
- ミスはあったけれど、隠さずに共有できた
こうした部分は、
自分の評価軸で見れば「プラス」として残していいところです。
ステップ3:「上司のコメント」を、自分の評価軸に翻訳する
理不尽なフィードバックを丸呑みせず、
一度「翻訳」してから受け取るイメージも役に立ちます。
たとえば、上司から
「お前はいつも段取りが悪い」
と言われたとします。
そのまま受け取ると、
「自分は段取りが悪い人間だ」
というラベルになってしまいますが、
翻訳してみると、こんなふうに分解できます。
- どの場面の、どの行動を見てそう言われたのか?
- 具体的にどこが問題だったのか?
- 自分の大事にしている軸から見たとき、改善できそうなところはあるか?
もし、
- 情報共有のタイミングが遅れた
- 優先順位の確認を自分からできていなかった
など、改善できる要素が見つかれば、そこだけ拾います。
逆に、
- 上司の指示が直前まで曖昧だった
- 上司の気分によって締め切りや条件が変わった
といった要素が大きいなら、
「ここは、上司の理不尽さの影響が大きい」
という認識をはっきり持ち、
「自分が全面的に悪い」とは結論づけないようにします。
理不尽さから心を守る「心理的距離」のとり方
自分の評価軸を守るためには、
上司との間に「見えないクッション」を置くイメージも大切です。
「人としての自分」と「仕事上の自分」を少し分けてみる
理不尽な言葉を浴び続けると、
どうしても「人格」を否定されたように感じてしまいます。
そこで、心の中で次のように分けてみます。
- 上司が評価しているのは、「あくまで仕事上のパフォーマンスの一部」
- 「人間としての価値」まで判断される筋合いは、本来ない
もちろん、実際には人格攻撃のような言葉も飛んでくるかもしれません。
それでも、自分の中では、
「今批判されているのは、あくまで“仕事上のロールの一部”」
と、少し引いた視点を意識するだけで、ダメージは少しずつ変わってきます。
「この人は、こういうフィルターで世界を見ている」と捉える
理不尽な上司は、たいてい
- ものごとを短期目線でしか見ていない
- 自分の価値観を絶対視している
- 感情のコントロールがうまくいっていない
など、「そうなってしまう背景」があります。
だからといって許す必要はありませんが、
「この人の価値基準は、あくまで“この人のフィルター”にすぎない」
と考えてみます。
- 「スピード至上主義のフィルター」
- 「上下関係重視のフィルター」
- 「自分の正解しか認めないフィルター」
そのフィルターを通した結果としての言動なのだ、と捉えると、
「世界そのものから否定されている」感覚は、少し和らぎます。
一緒に働いている人やお客様から、もう一つの尺度をもらう
自分だけで評価軸を立て直すのが難しいとき、
「周りの人の声」を少し頼りにするのも、大切な手がかりになります。
同僚・後輩・他部署との関わりに目を向ける
理不尽な上司のもとでは、どうしても視界が「上司との関係」に偏りがちです。
そこで意識して見てみたいのが、
- 一緒に仕事をしている同僚
- チームの後輩
- 他部署の人たち
とのやり取りです。
- 自分に相談を持ちかけてくれる人がいる
- 困ったときに頼られることがある
- 自分の説明で「分かりました」と表情がやわらぐ瞬間がある
こうした場面は、
「上司以外の誰かから見た、自分の姿」 のヒントになります。
できれば、信頼できる同僚に、そっとこんな質問をしてみてもいいかもしれません。
「私って、仕事のどんなところが役に立ってると思う?」
大げさなことを聞かなくても、
何か一言返ってくれば、それは自分の評価軸を支える材料になります。
お客様の声・社外の反応を自分の支えにする
もし対外的な仕事をしている場合は、
お客様やクライアントの反応も大切な手がかりです。
- 直接かけてもらった言葉
- メールに書かれていた感謝の一文
- 継続して依頼をもらえている事実
これらは、「上司の評価」とは別に存在する価値の証拠です。
心が折れそうなときに読み返せるよう、
- 感謝の言葉をスクショしておく
- ノートの1ページにメモしておく
といった形で、目に見える形に残しておくと、
「自分は何者でもない」という感覚に飲み込まれそうなときの支えになります。
「ここまでは耐える/ここから先は守る」というラインを決めておく
いくら評価軸を守ろうとしても、
あまりに理不尽さが行き過ぎていると、心と体がついていけなくなります。
そのときのために、
「ここを越えたら、本気で環境を変えることを考える」 というラインも、
自分なりに決めておくことが大切です。
例としては、たとえばこんなものがあります。
- 毎日のように人格否定の言葉を浴びる
- 身体症状(眠れない・食欲がない・朝起きられない・涙が出るなど)が続く
- ミスの責任を不公平に押し付けられ続ける
- セクハラ・パワハラにあたる発言や行動が頻発する
これらは、「慣れるべきこと」ではなく、
本来は組織として対処されるべき問題です。
信頼できる人・機関に「状況を外に出す」
一人で抱え込むと、自分の感覚がどんどん麻痺していきます。
- 人事・コンプライアンス窓口
- 労働組合
- 産業医や社外の相談窓口
- 信頼できる友人・家族
誰か一人でもいいので、
「実際に何があったのか」を、できる範囲で話してみることは、とても大きな一歩です。
それは、
「自分の感覚を、外の世界に確認してもらう行為」 でもあります。
中長期の「出口戦略」を静かに整えておく
理不尽な上司のもとで長く働き続けるのは、どうしても心身への負担が大きくなりがちです。
「今すぐ辞める」が難しい状況でも、
中長期的な選択肢を持っておくだけで、
心の中の「追い詰められている感」は少し和らぎます。
転職・異動をすぐにはしないとしても「調べておく」
- 自分の経験やスキルで、他にどんな求人があるのか眺めてみる
- 社内の他部署・他拠点に、どんなポジションがあるか調べてみる
- 職種を変えた人・部署を変えた人の話を、社内外で聞いてみる
これらはすべて、
「今の上司が唯一の世界ではない」という感覚を持つための行動です。
「今の環境にいながらできること」と「環境を変えたときに使えるもの」を分けて考える
ノートに、次の2つの欄を作ってみます。
- 今の環境にいながらできること
- 環境を変えたときに活きるもの
たとえば、
- 今の環境にいながらできること
- 業務の中で、自分の得意分野を深める
- 同僚や他部署との信頼関係を築いておく
- 仕事の記録をこまめに残しておく(どんな案件をどの規模で担当したか、など)
- 環境を変えたときに活きるもの
- 現場で培った対応力
- 混乱の多い環境で、何とか回してきた経験
- 「こういうマネジメントはしないでおこう」という反面教師的な学び
こうして書き分けてみると、
「今ここで経験していること」が、
将来自分の武器になるイメージも少し持ちやすくなります。
おわりに:理不尽さの中でも、「自分への信頼」を少しずつ取り戻す
理不尽な上司のもとで働くことは、本当に消耗します。
一日を乗り切るだけでも、相当なエネルギーが必要です。
そんな中で、
- 自分の評価軸を守る
- 自分の仕事を、自分の目でも見てあげる
というのは、言葉で言うほど簡単ではありません。
だからこそ、すこしずつ、ほんの小さなところからで大丈夫です。
- 仕事で「大事にしたいこと」を3つ書き出してみる
- 1日の終わりに、「自分のものさしで見てよかったところ」を1行メモする
- 理不尽なフィードバックを、そのまま「自分の全否定」にしない
- 同僚やお客様からの「ありがとう」を、自分の中でちゃんと受け取る
- 「ここを越えたら、環境を変えることも考える」というラインを、自分の中に持っておく
どれか一つでも「やってみようかな」と思えるものがあれば、
それだけでも、評価軸がすべて上司の手に渡ってしまうのを防ぐ一歩になります。
あなたが日々していることは、
「理不尽な上司に耐えている」ことだけではありません。
- チームの仕事を前に進めている
- 空気を和らげている
- ミスやトラブルを最小限に抑えている
- 誰かの安心や成果を、目立たないところで支えている
そうした一つひとつに、
本来は十分すぎるほどの価値があります。
どうか全部を、上司一人のものさしだけで判定しきらなくて大丈夫です。
あなた自身の中に、「自分はこういう仕事をしたい」「ここはよくやった」と言える静かな声が、
少しずつ、また聞こえるようになっていきますように。

