がんばるのが当たり前になっている人は、たいてい「がんばりたいから」だけでなく、「がんばらないとまずいことが起きそうで怖い」「期待を裏切りたくない」「自分だけ休むのは申し訳ない」という気持ちも、同時に抱えています。
その結果、頭も体もずっと「オン」のままになり、「休む」と聞くと、うしろめたさや不安までセットでついてきてしまいます。
この記事では、
- なぜ「がんばるのが当たり前」になってしまいやすいのか
- 「がんばってない時間」が怖く感じる理由
- いきなり長期休暇を取るのではなく、日常の中に“がんばっていない時間”を少しずつ混ぜる方法
- 仕事・家事・人付き合いごとに、「ここまではやる」「ここからはやらない」というラインを決める考え方
- 罪悪感を少しずつ薄めていくための、自分への声かけ
を、ゆっくり整理していきます。
ポイントは、
・「ずっとがんばるか/一切がんばらないか」の二択にしないこと
・日常の中に、“がんばらないポケット時間”を少しずつ増やしていくこと
です。
「もう何もかも投げ出す」必要はまったくありません。
この記事を読み終わるころ、「このくらいなら、自分の生活にも混ぜられそう」というものをひとつ見つけてもらえたらうれしいです。
なぜ「がんばるのが当たり前」になってしまうのか
まずは、「どうしてこんなにがんばってしまうのか」をやさしい目で眺めてみます。
多くの場合、そこにはこんな背景があります。
- 小さいころから「ちゃんとしていてえらいね」「がんばり屋さんだね」と言われてきた
- 家族の中で、空気を読んで動く役割を担ってきた
- 仕事や学校で、「頼れる人」として扱われてきた
- 失敗したり、気を抜いたりして責められた経験がある
- 誰かが困っているのを放っておけない性格
こうした経験を重ねるうちに、
「がんばっている自分=愛される・認められる自分」
「がんばれない自分=価値がない・役に立たない自分」
というイメージが、心のどこかに根づきます。
さらに社会全体にも、「忙しい=充実している」「動き続けている人がえらい」という空気があります。
その中で真面目な人ほど、「立ち止まること」「手を抜くこと」が怖くなってしまうのは、ある意味とても自然なことです。
「がんばってない時間」が怖いのは、さぼりたいからじゃない
本当はゆっくりしたいのに、いざ何もしない時間ができると、落ち着かなくなる。
そんなことはないでしょうか。
- 何もしていないと、「この時間であれもこれもできたのに」と責めてしまう
- 休んでいる間に、誰かに追い抜かれそうな不安が出てくる
- 家族や同僚の目が気になって、「ちゃんとして見られたい」と思ってしまう
- ソファでぼーっとしているだけで、「だらしない」と自分にラベルを貼ってしまう
これらはどれも、「怠け者だから」ではありません。
むしろ、
「がんばってきた自分を、がんばることで守ってきた」
「がんばることでバランスを取ってきた」
結果として、
「がんばっていない=自分の存在価値が危うくなる」ような感覚になっているから、怖いのです。
だから、「がんばらない時間をつくる」ために必要なのは、
- 意志の強さでも
- 突然の大きな決断でもなく
「がんばらなくても、自分はここにいていい」と、少しずつ体に覚えてもらうこと。
そのためにできることを、ここからひとつずつ見ていきます。
まずは「今どれくらいがんばっているか」を見える化する
「がんばりすぎ」と頭では分かっていても、「具体的にどこが?」と言われると、説明が難しいことがあります。
そこで、最初のステップとして、
1週間のうち「自分が何にどれだけ時間とエネルギーを使っているか」をゆるく見える化してみます。
ノートやメモアプリに、こんな感じで書き出してみてください。
- 平日1日の流れ(起床〜就寝まで)をざっくり時間帯ごとに
- 6:30〜7:30 朝の支度・家事
- 8:00〜9:00 通勤
- 9:00〜18:00 仕事(+昼休憩30分)
- 19:00〜21:00 夕食づくり・片づけ
- 21:00〜23:30 スマホ・だらだら・明日の準備
そのうえで、自分なりに「がんばっている時間」に印をつけてみます。
- 人のため・仕事のために動いている時間
- 気を張っている時間
- 「しなきゃ」「ちゃんとしよう」と思っている時間
たとえば、印をつけてみた結果、
- ほぼ一日中「何かしなきゃ」と思っている
- ぼーっとしている時間でさえ、罪悪感で頭がいっぱい
- 夜の“だらだらタイム”も、「本当に休めている感じ」がしない
ということが見えてくるかもしれません。
この見える化は、「やれていない自分」を責めるためではなく、
「そりゃあ疲れるよね」と、自分に納得するためのもの
です。
まずは、「今の自分、けっこうなハイペースで生きているな」と気づいてあげることから始めましょう。
“がんばってない時間”は、いきなり長くしなくていい
「休もう」と聞くと、多くの人が思い浮かべるのは、
- 有給をとって丸一日休む
- 旅行に行って非日常を味わう
- 何もしないで一日ゴロゴロする
といった「まとまった休み」です。
もちろんできるときは素敵ですが、がんばるのが当たり前になっている人にとっては、いきなりそこまでのオフはハードルが高く感じられます。
そこでおすすめしたいのは、
「1分・3分・5分」の“がんばってない時間”を、1日のどこかに混ぜていくこと
です。
1分だけの「完全に何もしない時間」
- スマホも触らない
- 何かを考えようともしない
- ただ、深呼吸をしてぼーっとする
これを1分だけ、キッチンの椅子に座って、デスクの下で、トイレの中で、どこでもいいのでやってみます。
「1分だけ」と思うと、罪悪感はかなり小さくなります。
それでも、最初は落ち着かないかもしれません。
- 「早く次のことしなきゃ」
- 「これで1分使うなんてもったいない」
そう思ってしまう自分にも、「それくらい日々頑張ってるんだな」と声をかけてあげてください。
3分だけの「自分のための飲みものタイム」
- コーヒーやお茶を入れる
- カップを両手で包んで、温度を感じる
- 3分だけ、SNSやメールも見ない
この3分を、「自分のために使っていい」と決めてみます。
ポイントは、「ながら」ではなく、「飲むことだけをする」こと。
- コーヒーの香り
- カップの重さ
- のどを通る温度
それを感じながら、「あ、今私は『がんばってない時間』の中にいるんだな」と意識してみます。
5分だけの「何をしてもいい時間」
5分だけ、タイマーをかけて、自分にこう言ってみます。
「この5分は、何をしてもいい」
- 好きな音楽を1曲だけ聴く
- ぼーっと窓の外を見る
- 机の上だけ片づける
- ごろっと横になって天井を見上げる
“生産性”があるかどうかは、一切考えなくていい時間です。
大事なのは、
「ちゃんと時間をとって、自分のために『何もしない/好きなことをする』練習をする」ということ。
最初は1分や3分からで十分です。
それを続けていくうちに、「がんばっていない時間」に体が少しずつ慣れてきます。
家事・仕事の「手抜きライン」を、自分で決めておく
がんばるのが当たり前の人は、家事や仕事にも「常に100点を目指すクセ」がつきがちです。
- 食器はたまらないうちにすぐ洗う
- 洗濯は毎日きっちり回して干す
- メールにはできるだけ早く返信する
- 仕事の資料は細部まで完璧に整える
もちろん、真面目さや丁寧さは大きな強みです。
でも、それが自分を追い詰めているとしたら、少し見直してもいい部分かもしれません。
「ここまではやる」「ここからは今日はやらない」を決める
ノートに、「家事」「仕事」と項目を書いて、その下に箇条書きしてみます。
たとえば家事なら、
- 絶対にやりたい(やらないと困る)
- ゴミ出し
- 最低限の洗濯
- 食器をシンクにためすぎない程度には片づける
- 余裕がある日だけやる
- きっちりした掃除機がけ
- 洗面所やキッチンの念入り掃除
- アイロンがけ
仕事なら、
- 期日が今日中のもの
- 早めに進めておきたいけれど、明日でも間に合うもの
- 「やったほうがいいけれど、今すぐでなくてもいい」改善・提案系の仕事
などを分けてみる。
ここでのポイントは、
「全部毎日やるべき」と自分に課しているルールを、現実に合わせてゆるめていくこと
です。
「今日は余裕がないから、最低限ラインまででOK」
「この改善案は、来週以降の自分にバトンを渡そう」
そうやって、「手抜き」ではなく「調整」だと位置づける と、自分を責めにくくなります。
人との境界線を少しだけ厚くする
がんばる人ほど、周りの人の期待やお願いに、すばやく応えようとします。
- 頼まれごとにすぐ「いいよ」と言ってしまう
- LINEやメールの返信を急いで返さなきゃと落ち着かない
- 職場でも家庭でも、「自分が動いたほうが早い」と感じてしまう
その結果、「自分の“がんばってない時間”」がどんどん削られていきます。
頼まれごとに、ワンクッション置く習慣
すべてを断らなくていいので、まずはここから始めてみます。
「自分に頼まれごとが来たら、即答しないで一呼吸おく」
具体的には、
- 「ちょっと確認してから返事してもいい?」
- 「今日は余裕がなくて…明日以降でよければ考えるね」
- 「今週は予定が詰まってて、今回は難しそうです」
など、一言添えて、その場で背負い込まない。
これは、「相手のお願いを拒絶する」というよりも、
「自分の余力を確認するための時間を確保する」行為 です。
LINEやメールの「即レス義務」を外してみる
がんばり屋さんほど、「すぐ返事しなきゃ」と自分を急かしてしまいます。
心がくたびれているときは、
- プライベートのメッセージは、「読むのも返すのも、夜○時以降/朝○時以降」と時間を決める
- 既読をつけていない時間を、「感じ悪い」ではなく「自分を守るための時間」と位置づける
そんな「ゆるいマイルール」をつくってみてもいいかもしれません。
「即レスじゃなくても、この人との関係は壊れない」という経験を少しずつ重ねていくと、人との境界線は自然と厚くなっていきます。
「がんばってない時間」に浮かんでくる罪悪感との付き合い方
少し余白をつくろうとすると、たいていセットでやってくるのが罪悪感です。
- 「この時間、もっと生産的に使えるはず」
- 「みんなはもっと頑張っているのに」
- 「自分だけ休んでいるみたいで申し訳ない」
そのたびに「こんなこと思うなんてダメだ」とさらに自分を責めてしまうと、休むこと自体がますます怖くなってしまいます。
ここで意識したいのは、
罪悪感が出てくる=「今までずっと頑張ってきた証拠」だと捉え直すこと
です。
罪悪感が出てきたときの、心の中の言い換え
休んでいるときにふと罪悪感が顔を出したら、心の中でこうつぶやいてみます。
- 「それだけ今まで、がんばるのが普通だったんだよね」
- 「今までの私なら、この時間も働いてたかもしれないね」
- 「ちょっとずつ慣れていこうね。今日はこの5分だけでもいいから休ませてあげよう」
罪悪感を「悪者」として追い出そうとするのではなく、
「長年一緒にいた相棒みたいなものなんだな」
と捉えて、「そうだよね」と一度受け止める。
そのうえで、
「でも今回は、新しいやり方も試してみたいから、ちょっとだけ横に座っててね」
と、自分で選び直すイメージです。
“がんばってない時間”を「ムダ」ではなく「燃料補給」と考える
がんばるのが当たり前の人にとって、「休み」はどうしても「仕事や家事の合間に仕方なくとるもの」と感じられがちです。
でも、実際には、
- 集中力を回復させる
- 心の余裕をつくる
- 長く走り続けるためのペースを整える
という意味で、“がんばってない時間”は、がんばるための前提条件 に近いものです。
たとえば、車はガソリンがなければ走れません。
「走る時間」だけが価値ではなく、「ガソリンを入れる時間」もまた、走り続けるために欠かせない時間です。
それと同じように、
- 何もしないでぼーっとする時間
- 好きな音楽や動画を見て笑う時間
- 誰にも気を使わずコーヒーを飲む時間
は、あなたの心と体にとっての「燃料補給」です。
ノートにこう書いてみるのもおすすめです。
「◯分間ぼーっとした=明日・来週の自分のガソリンになった」
「ムダにした」と思っていた時間が、
「未来の自分のための投資」として見えてくると、少しだけ休みやすくなります。
1週間だけ試してみる“小さな実験プラン”
最後に、“がんばってない時間”を生活に混ぜてみるための、1週間お試しプランを提案します。
全部やる必要はなくて、「これならできそう」と思うものを組み合わせてみてください。
平日
月曜日〜金曜日共通のゆるいルール
- 1日1回、「1分だけ何もしない時間」をつくる
- 1日1回、「3分だけ自分のために飲みものを楽しむ時間」を意識してみる
- 夜、寝る前に「今日がんばったこと」を1つ、「今日がんばらなかったこと」を1つノートに書いてみる
例:
がんばったこと:眠いのに仕事を最後まで終わらせた
がんばらなかったこと:洗濯物をたたむのを翌日に回した
「がんばらなかったこと」を書くのは一見変ですが、「それでも1日はちゃんと回っている」ことを、自分に見せてあげるためです。
休日
土日どちらか片方だけでいいので、「がんばらない日」を1つ作る
とはいえ、家事や育児、さまざまな事情で「全休」は難しいかもしれません。
そこで、次のうち1つだけ選んでみます。
- 「この日は家事を7割までにする」と決める(掃除を最低限にする/凝った料理はしない など)
- 「午前/午後のどちらかは、自分のために使う」と決める(読みたい本を読む・散歩・好きなカフェに行くなど)
- 「今日は1つだけ、人の期待に応えることを減らす」と決める(誰かの誘いを断る・気乗りしない予定を延期する など)
そして寝る前に、「今日がんばらないでよかったこと」を3つ書いてみます。
・洗濯を明日に回したけど、今そこまで困っていない
・夕飯は簡単なもので済ませたけど、おいしかった
・誘われた飲み会を断って、ゆっくりお風呂に入れた
こうして、「がんばらなかった自分にも、ちゃんとメリットがあったんだ」と見える形にしておくことで、「がんばってない時間」への信頼が少しずつ育っていきます。
おわりに:がんばることも、がんばらないことも、どちらもあなたの味方
がんばるのが当たり前になっている人は、本当にたくさんのものを支えています。
- 職場の仕事
- 家庭の毎日の暮らし
- 周りの人の気持ち
- 将来への不安との折り合い
そのどれもに、あなたの「がんばる力」が注がれてきました。
その力は、これからもきっと、あなたを助けてくれます。
決して、がんばること自体を手放す必要はありません。
ただ、同じくらい大切なのは、
・がんばらない時間を持っている自分も、ちゃんと存在していていい
・がんばらない時間があるからこそ、またがんばれる
と、体で覚えていくこと。
今日からいきなり生き方を変えなくても大丈夫です。
- 1分だけ何もしない時間
- 3分だけ、自分のための飲みもの時間
- 「今日はここで手を抜いてもいい」と自分に許可を出す瞬間
そんな小さな“がんばってない時間”を、1日のどこかに差し込んでいくところから。
がんばっている自分も、がんばっていない自分も、どちらもあなたの一部です。
どちらかを否定するのではなく、「両方あっていい」と思える日が、少しずつ増えていきますように。

