同僚の結婚や出産の報告を聞いたとき。
笑顔で「おめでとう〜!」と言いながら、心の中ではざわざわしたり、どこか遠いところにいるような気持ちになったり。
そのあとひとりになった瞬間、急に胸のあたりが重くなって、「何この感覚…」と自分でも持て余してしまうことがあります。
そんなとき、多くの人がまず最初にやってしまうのは、
- 「素直に喜べないなんて、人としてどうなんだろう」
- 「性格悪いのかも」「心が狭いのかも」
と、自分を責めることです。
でも本当は、それだけあなたに「大事にしたい何か」があって、
それに触れるニュースだからこそ、心が大きく動いているだけかもしれません。
この記事では、同僚の結婚・出産報告を素直に喜べないときに、「自分の感情とどう付き合うか」をじっくり扱っていきます。
- なぜこんなにざわつくのか
- 「喜べない自分」をどう扱えばいいのか
- 職場でのふるまいを、どこまでやれば十分と言えるのか
- 比較で苦しくなった心を、どうやって自分のほうに連れ戻してくるのか
- そこから先の「自分のこれから」を、どう見つめ直していくか
一気に前向きになる必要はありません。
「この感じ、自分だけじゃなかったんだ」と思えるところが、どこかひとつでも見つかれば十分です。
なぜ同僚の「結婚・出産報告」はこんなに刺さるのか
同じ「おめでたいニュース」でも、
芸能人の結婚報道を見たときと、同僚からの直接の報告を聞いたときでは、心の揺れ方がまったく違うと思います。
そこにはいくつかの理由があります。
「同じスタートラインにいたはずの人」という感覚
同僚は、多くの場合こんな存在です。
- 同じ時期に就職・転職した
- 社歴が近く、仕事の悩みも似ている
- 給与レンジや生活水準も、なんとなく想像がつく
そんな人が結婚・出産となると、
「同じレーンを走っていたはずなのに、
先に“次のステージ”に進んだように見える」
という感覚が生まれやすくなります。
それは単なる「うらやましい」を超えて、
- 「自分はこのままでいいのかな」
- 「何も変わっていないのは自分だけかもしれない」
という 「自分の今と未来への不安」 を強く刺激します。
社会の「当たり前年齢」とぶつかるテーマだから
結婚や出産は、どうしても社会的な「暗黙の基準」がつきまといやすいテーマです。
- 「そろそろ結婚してもいい年齢だよね」
- 「30代ならそろそろ…」
- 「子どもは早いほうがいいよ」
そんな言葉を、親・親戚・職場・テレビやSNSから何度も浴びていると、
自分では意識していなくても、心のどこかに「そういうものなのかな」という感覚が蓄積されていきます。
そこに同僚の報告が重なると、
「やっぱりみんな、その流れに乗っているんだ」
「自分だけ違うレールに取り残されているのかも」
という感覚が一気に強くなり、心が揺さぶられます。
自分の「今」と「叶っていない願い」が浮かび上がる
さらに厄介なのは、報告を聞いた瞬間、
心の中でさまざまな「自分の現実」が一気に浮かび上がることです。
- 恋人がいない・パートナーシップがうまくいっていない
- 仕事が忙しすぎて、恋愛どころではない
- 経済的・家庭的な事情で、結婚や出産が現実的に難しい
- 結婚そのものへの迷い・違和感がある
- とある事情(体のこと、価値観、性的指向など)から、同じ流れが簡単には選べない
こうした事情は、他人からは見えません。
でも、自分の中ではよく分かっているからこそ、
「あ、自分は簡単にはそこに行けないんだ」
「同じステージの話を笑って聞くことが、こんなに苦しいんだ」
という現実を突きつけられるような感覚が強くなります。
この痛みは、決して「相手の幸せを願っていない」からではなく、
「自分の現状」と「本当は大事にしたいもの」との距離が、
目の前にくっきり浮かんでしまうから
なのだと思います。
「素直に喜べない自分」を、まずジャッジしない
ここで一番最初にやりたいのは、「自分を裁くこと」を一度やめてみることです。
感情は「良い・悪い」で区別しなくていい
- モヤっとする
- チクっと刺さるような感覚がある
- 帰り道に泣きたくなる
- SNSでお祝いの投稿を見るのがつらくなる
こうした反応は、
「この状況でそう感じるのが自然なくらい、あなたにとって大切なテーマなんだ」 とも言えます。
「祝福できない自分」は、「優しさが足りない自分」ではなく、
「まだ整理しきれていない本音」を抱えている自分
です。
まずはそれを、そのまま感じていることを認めてあげる。
- 「私は今、あの報告を笑顔で受け取れる状態じゃないんだな」
- 「それくらい、結婚や家族のことが、自分にとって大きなテーマなんだな」
と、そっと言葉をかけてあげることが、いちばん最初のステップです。
自分を責める言葉を、少しだけゆるめてみる
頭の中に浮かぶ、
- 「性格悪いな」
- 「心が狭い」
- 「大人げない」
といった言葉は、一度「本当にそう?」と問い直してみてください。
多くの場合、その裏側には、
- 人の幸せを喜びたい
- 自分もああなりたいという思いがある
- でも現状とのギャップが大きすぎて、心が悲鳴をあげている
という、とてもまっとうな感情があります。
「自分はひどい人間だ」と決めつけてしまうと、
その大切な本音に近づく前に、扉が閉まってしまいます。
感情を分解してみる:「うらやましさ」「不安」「さみしさ」
モヤモヤをそのまま抱えていると、
心の中はただ重たいだけで、どう扱っていいか分からなくなります。
そこでおすすめなのが、
「今感じているものを何種類かに分けてみる」 ことです。
ノートやスマホに、こんなふうに書き出してみます。
うらやましさ
- 自分も祝福される側に立ってみたい
- パートナーや家族と一緒にいる安心感がほしい
- 「これから2人で」「これから家族で」という未来を語れるのが純粋にうらやましい
不安
- 自分はこの先どうなるんだろうという漠然とした不安
- このまま時間だけが過ぎて、選択肢が減っていくのではという怖さ
- 仕事だけ、1人の生活だけで、この先何十年を支えきれるかという戸惑い
さみしさ
- 周りが次々と環境を変えていく中で、自分の居場所がだんだん変わってしまうようなさみしさ
- 共通の話題が減っていき、「昔のようには話せなくなるのかな」という寂しさ
- 自分の近況を「いいね」と言い合える人が、少しずつ少なくなる感覚
こうやって分解してみると、
「私はあの人の不幸を願っている」のではなく、
「私には私の“不安・願い・寂しさ”がある」
という構図が見えやすくなります。
感情を一つの塊で扱うのではなく、
「いくつかの色に分かれた気持ち」として扱えると、
自分へのまなざしも少し柔らかくなります。
職場でのふるまい:「最低限これで十分」というラインを決める
では、現場で実際にどう振る舞うか。
ここで役に立つのが、
「仕事の人間関係として、これだけできていれば十分」
というラインを自分の中に決めておくことです。
お祝いの言葉は「シンプル+一言」で十分
- 「おめでとうございます!」
- 「ご結婚(ご出産)、本当におめでとうございます」
- 「素敵なご報告ですね。どうぞお幸せに」
ぐらいのシンプルな言葉で、
仕事上は十分です。
周りのテンションに合わせて、
無理ににぎやかなコメントをつけなくてもかまいません。
心の中ではまだ整理がついていなくても、
・最低限の礼儀としてのお祝い
・社会人としての挨拶
としてそっと言葉を渡しておく。
それで役割としては果たしています。
「盛り上げ役にならなくていい」
報告のあとに、周囲がわっと盛り上がることもあります。
- 写真を見せてもらう流れ
- 結婚式やベビーの話でわいわいする流れ
そうした場で、無理に中心に入っていく必要はありません。
- ニコッと笑ってうなずく
- 「いいですね〜」と一言添える
- ある程度したら、自分の作業に戻る
くらいでも、関係性としては十分です。
「雰囲気を壊さない程度にそこにいる」くらいの参加でOK と、自分に許可を出しておきましょう。
「お祝いモード」から、いったん距離を取る工夫
数日〜数週間は、職場全体が「お祝いモード」になることもあります。
そんな空気がつらいときは、意識的に距離を取る工夫をしてもかまいません。
会話の輪から、そっと外れてもいい
- ずっとその話題が続く休憩スペースから、少し離れて別の場所で過ごす
- 「ちょっと資料まとめてきます」と席を立つ
- イヤホンをして作業モードに入る(話しかけづらい雰囲気をつくる)
など、「今はその話題に付き合う余裕ないな」と感じるときは、
物理的な距離をとることで、心の距離も守れます。
お祝い会・ランチなどの参加をどうするか
職場によっては、
- 結婚・出産のお祝いランチ
- プレゼント購入のカンパ
- サプライズ企画
があるかもしれません。
しんどいなと感じたときの選択肢は、いくつかあります。
- お金だけ出して、会には参加しない
- 参加するけれど、早めに切り上げる
- 「どうしてもその日は外せない用事があって」と静かに距離を置く
無理をして笑顔で1〜2時間を過ごしたあと、
その数倍の時間、ひとりで落ち込んでしまうなら、
自分を守るために「関わり方の量」を減らすのも、大事な選択です。
同僚との「距離感」を、少しずつ調整していく
結婚・出産をきっかけに、
同僚との距離感が変わっていくこともあります。
- 話題が合わなくなったように感じる
- 仕事後に飲みに行く回数が減る
- 連絡頻度が自然と少なくなる
そうした変化を、「関係が壊れた」と受け止めてしまうと、とてもつらいです。
でも実際には、
「距離感や話題が、その人の今の生活に合わせて変化しているだけ」
であることも多いです。
「前と同じ距離」を維持しようとしすぎない
- 以前のように毎週のように遊べなくても
- 毎日のように仕事以外の話をしなくても
月に一度、あるいはもっとゆっくりなペースで、
「たまに近況を共有し合える関係」に変わっていくこともあります。
「前とまったく同じでなければ、関係が終わり」 ではありません。
「今のお互いの生活に合った距離感」に少しずつ調整されていく、
という見方もできます。
自分の側にも、新しいつながりを増やしていく
同時に、あなたの側も、
- 今の自分の生活や価値観に合う人
- 仕事・趣味・学びなどを共有できる人
とのつながりを、少しずつ増やしていけると、
「変わっていく人間関係」の痛みも和らいでいきます。
- 趣味や興味のコミュニティ
- オンラインの勉強会やサロン
- 昔の友人や知人との再会
「ライフステージが違う人とは話せない」ではなく、
「違うステージの人とも、違う形でつながっていける」 という柔らかさを持っていられると、心が少し楽になります。
SNSでの「おめでとうラッシュ」から身を守る
職場だけでなく、SNS上でも結婚・出産の報告が続くことがあります。
心が弱っているときには、それも大きな負担になります。
見ない選択をしてもいい
- 一時的にSNSアプリを消す
- ログアウトして数日〜数週間距離を置く
- ストーリーズやタイムラインを見る頻度を意図的に減らす
「みんなの近況を知っていたい」気持ちはありつつも、
「今は自分の心のほうが優先」 と割り切ってしまってかまいません。
ミュート機能を使う
祝福される人たちを「嫌い」なわけではなくても、
今はその情報を受け取る余裕がない、ということもあります。
- 一時的にミュートする
- 特定のキーワードを含む投稿を非表示にする
など、「情報の量」を自分の側から調整するのも、立派なセルフケアです。
自分の「これから」を、静かに見つめるきっかけにする
同僚の報告でざわつく気持ちは、
とてもつらいものですが、同時に、
「自分のこれからを、そろそろちゃんと見つめたい」
というサインでもあります。
ノートワーク:自分に問いかけてみること
時間をとれるときに、こんな問いを書き出してみるのもおすすめです。
- 「私にとって、結婚やパートナーシップはどんな意味を持つだろう」
- 「子どもを持つことについて、自分はどんな気持ちを持っているだろう」
- 「5年後・10年後、どんな毎日の風景の中にいたら、少し安心できるだろう」
- 「もし“結婚する・しない”“子どもを持つ・持たない”を一度置いておくとしたら、どんな生活なら心地よさを感じられそうか」
ここで大切なのは、
世間一般の正解を探すのではなく、「自分の言葉」を探すこと です。
- 親や周囲の期待
- 世間の「普通」
- メディアが描く「幸せの形」
から一歩離れて、
「私はどう生きていきたいか」を静かに考える時間は、とても価値があります。
「今すぐ答えを出さなくていい」と知っておく
とはいえ、これらの問いに、
すぐにスッキリした答えが出るとは限りません。
- どこかで結婚に憧れがある
- でも一人の自由も大事にしたい
- 子どもを持つかどうか、まだよく分からない
という“ゆらぎの中”にいるのが、
ごく自然な状態でもあります。
「揺れている自分」も、そのまま認めてあげる。
その上で、できる範囲で一歩ずつ考えていく。
同僚の報告は、その考えるきっかけになっただけ、と捉えてみると、
「心をかき乱したニュース」から、少し意味が変わってくるかもしれません。
信頼できる誰かに、「そのままの気持ち」を聞いてもらう
もし、話してもよさそうな相手がいるなら、
自分の本音を少し言葉にしてみることも、心の整理になります。
- 仲の良い友人
- きょうだい・家族
- パートナー
- カウンセラーや相談員などの専門家
に対して、
- 「おめでたいことなのは分かるんだけど、同時にしんどくなってしまって…」
- 「喜べない自分がいて、そのことでもまた落ち込んじゃってる」
と話すだけでも、
「それ、分かるよ」「そう感じてもいいよ」と言ってもらえることがあります。
一人の頭の中で回していると、「こんなふうに思うのは自分だけだ」と感じがちですが、
実際には同じような気持ちを経験している人は想像以上に多いものです。
おわりに──「祝えない自分」ではなく、「それだけ大事なテーマを抱えている自分」
同僚の結婚・出産報告を素直に喜べないとき、
私たちが一番傷つけてしまいがちなのは、「自分自身」かもしれません。
- 「最低だな」
- 「心が狭いな」
- 「友だち失格かも」
そんな言葉を、真っ先に自分に向けてしまうからです。
でもこの記事で見てきたように、その裏側にはたくさんの感情があります。
- うらやましさ
- 不安
- さみしさ
- 置いていかれる怖さ
- 自分の未来をどう描けばいいか分からない戸惑い
それらはすべて、
「あなたの人生をどうしていきたいか」
「どんな人たちと、どんな時間を過ごしていきたいか」
を真剣に考えている証拠でもあります。
だからこそ、
- 自分をジャッジする代わりに、「そう感じるくらい大事なんだね」と受け止めること
- 職場では「最低限の祝福」と「自分の心のペース」を分けて考えること
- しんどいときは、お祝いムードやSNSから距離を取ることを自分に許すこと
- モヤモヤをノートに書き出したり、信頼できる誰かに話してみること
- そのうえで、「自分のこれから」を、少しずつ自分の言葉で考えてみること
こうした小さなステップひとつひとつが、
「喜べない自分」を変えることよりも、
「そんなふうに揺れながらも、ちゃんと人の幸せと自分の人生の両方を見ようとしている自分」
を大切にしていく道につながっていきます。
同僚の報告にざわついてしまう日も、
心から一緒に喜べる日も、
どちらもあなたの人生の一部です。
どんな日も、「こんなふうに揺れる自分がここにいるんだな」と、

