管理職の打診や昇進の話がちらつき始める30代・40代。
「キャリア的にはチャンスなのは分かっている」「給料も上がるだろうし、断るのはもったいないのかも」と頭では思いつつ、心のどこかで「正直あまり気が進まない」「できれば今のままがいい」と感じてしまうこともあります。
そんな自分を「やる気がない」「成長意欲が足りない」と責めてしまっていないでしょうか。
この記事では、「管理職になりたくない」と感じている30代・40代が、「昇進=正解じゃない」と考えるためのヒントをまとめていきます。
昇進を否定するためではなく、「自分にとっての正解」「家族や人生全体から見たときの正解」をていねいに考えるための視点として、読んでみてもらえたらと思います。
「管理職になりたくない」と感じるのは、甘えではなく“感度の高さ”でもある
まず最初に、ここをはっきりさせておきたいのですが、
「管理職になりたくない」と感じること自体は、決して甘えでも怠けでもありません。
多くの人が、こんなことを無意識に察知しています。
- 会議・調整・マネジメントなど、“本来やりたい仕事”以外が増えそうだ
- メンバーのケアや評価、トラブル対応など、精神的な負荷が一気に高まりそうだ
- 責任は重くなるのに、自由に動ける範囲はかえって狭くなるかもしれない
- 残業や休日対応が増え、プライベートの時間が削られるかもしれない
つまり、
「管理職のメリット」だけでなく、
「リスクや負荷」もきちんと見えている
ということでもあります。
昇進の話を前にしたときに、
- そこまで背負いたくない
- 今のバランスを崩すのがこわい
- 自分の性格や特性からして、あまり向いていない気がする
と感じるのは、むしろ 「自分や周りに対して責任感があるからこそ」 出てくる感覚とも言えます。
「みんなが昇進したがるのが普通で、自分だけ変なんだ」と思わなくて大丈夫です。
最初の一歩として、
「私は、管理職の負荷をちゃんとわかっているからこそ迷っている」
と、自分の感度を認めてあげてください。
「昇進=正解」という前提は、どこから来ているのか
次に、「昇進=正解」という思い込みが、どこから来ているのかを少し眺めてみます。
- 学生の頃から「成績が良い=いいこと」「褒められる=成功」と刷り込まれやすい
- 会社の制度として、「昇進・管理職」が報酬アップや評価の主ルートになっている
- メディアや周囲の価値観として、「出世=優秀」「昇進しない=伸びない人」という空気がある
- 親世代から、「上を目指さないとダメだ」「管理職になって一人前」と言われてきた
こうした環境の中に長くいると、
会社員としての「ゲームのルール」=
昇進していくこと/管理職になること
という前提が、知らないうちに自分の中に固定化されてしまいます。
ただ、30代・40代になってくると、
- 仕事以外の役割(家族・子育て・介護・パートナーとの生活)が重くなる
- 自分の健康やメンタルに、以前より気を配る必要が出てくる
- 「この先20〜30年働き続ける」現実が、よりリアルに見えてくる
という変化も起きます。
そこで初めて、
「昇進だけが正解というわけではないのでは?」
「このペースで走り続ける前提でのキャリア設計には、違和感がある」
と感じるようになるのは、むしろ自然な変化です。
「昇進=正解」が一つの価値観であることを理解しつつ、自分はどうしたいかを考えていく段階に来ている
ということでもあります。
「昇進しない=成長しない」ではない
よくある思い込みのひとつが、
昇進しない=成長を止めること
昇進する=成長し続けること
という図式です。
もちろん、管理職になって初めて得られる経験も多くあります。
- 人を育てる側に回る経験
- 組織や事業全体を俯瞰する視点
- 経営層との距離感が変わることで見える景色
これらは貴重ですし、「一度は経験しておきたい」と思う人がいるのも当然です。
一方で、「昇進しない」という選択をしたからといって、
- 専門性を磨けない
- 新しいスキルを身につけられない
- 成長できない
というわけではありません。
たとえば、
- 専門職としてのスキルを深堀りする(エンジニア・デザイナー・営業のプロ など)
- 特定領域の「社内一の詳しい人」「相談される人」になる
- 顧客との関係構築・現場の改善など、“プレイヤーとしての価値”を最大化していく
など、プレイヤー路線での成長やキャリアアップの仕方も、本来はいくつも存在します。
問題は、それを会社側がどの程度制度として用意しているか、です。
- 管理職以外の昇給・評価ルートがあるのか
- 専門職・プロフェッショナル職という枠がきちんと設計されているか
- マネジメント以外の役割に対して、どれくらいリスペクトが払われているか
ここが弱い会社だと、
「昇進しない=成長しない」と見なされがちです。
でも、それは 会社側の設計の問題 であって、
あなた自身に価値がないわけではありません。
自分の中では、
「自分は、どんな成長を望んでいるのか」
「そのために、どんな役割や働き方が合っていそうか」
を言葉にしておくことが大切です。
自分が本当に望む「仕事と生活のバランス」を見直す
管理職になるかどうかを考えるとき、
「仕事の話だけ」で判断すると、あとで苦しくなりやすくなります。
30代・40代は、人生全体で見ても、役割が増えやすい時期です。
- 子育てや家族との時間を大事にしたい
- パートナーや友人との関係性を丁寧に育てたい
- 自分の健康・メンタルケアにも時間を使いたい
- 両親の体調や介護と向き合う可能性も高まる
- 趣味や学び直しなど、「仕事以外の軸」も持っておきたい
こうした要素を全部含めて、
「自分は、どんな生活を送りたいのか」
という視点から考えてみることが大切になります。
おすすめなのは、紙にざっくり書き出してみることです。
- 平日の1日を、理想的に過ごすとしたらどんな感じか
- 週末に、どんな時間を持てていたらうれしいか
- 家族や大切な人との時間を、どれくらい確保しておきたいか
- 自分の健康のために、どれくらい時間やエネルギーを使いたいか
そのうえで、
- 管理職になった場合、そのバランスはどう変わりそうか
- 今の部署や会社の管理職の人たちは、実際どんな生活をしていそうか
- その状態は、自分にとって「耐えられる」「許容できる」範囲なのか
を、一度冷静に眺めてみます。
「昇進しても、人生の他の部分がボロボロになるなら、それは本当に“成功”と言えるのか?」
という問いを、自分なりの言葉で考えてみること。
ここでの答えは、人によって違っていて当然です。
「向いているかどうか」を、もう少し具体的に分解してみる
「自分は管理職に向いていない気がする」という感覚も、
少し分解してみると、「全部が×」というわけではないことがあります。
たとえば、管理職の役割には、
- メンバーの業務の進捗管理
- チーム内の調整・対外的な折衝
- 目標設定と評価
- メンバーの育成・面談・フォロー
- 経営層へのレポート・数字管理
- 問題が起きたときの矢面に立つ役割
など、いくつかの側面があります。
ここでやってみたいのは、
「全部苦手なのか? それとも特定の部分に特に抵抗があるのか?」
を切り分けてみることです。
- メンバーと話すことは好きだけれど、評価をつけるのは苦しい
- 顧客との折衝は得意だけれど、社内政治は避けたい
- 数字のプレッシャーには割と耐えられるが、常にトラブル対応の矢面に立つのはしんどい
こうやって見てみると、
- 「この部分なら、実は向いているかもしれない」
- 「ここが自分にとって危険ポイントだな」
というのが見えてきます。
もし昇進の打診があったときには、
- 自分はこういう部分なら貢献できそう
- こういう役割を求められると、パフォーマンスが出にくい
といった話を、上司と対話する材料にもなります。
「向いてないかもしれない」=「全部ダメ」ではありません。
自分の得意・不得意を知ったうえで選ぶほうが、
どちらに転んでも後悔は少なくなります。
「昇進を断る」ことは、本当にキャリアのマイナスだけなのか
多くの人が怖いのは、ここかもしれません。
- 昇進の話を断ったら、「やる気がない人」と思われるのでは
- もう二度とチャンスが回ってこないのでは
- 評価や給与に悪影響が出るのでは
確かに、会社や上司によっては、
短期的にはそういう扱いをされてしまう可能性もあります。
ただ、その一方で、
- 「この人は、自分の状態や希望をきちんと自覚している」と伝わる
- 中途半端な覚悟で管理職になって、短期間で潰れるリスクを防げる
- 自分の“軸”を持った人として、別の役割で信頼される
という側面もあります。
大事なのは、「断り方」と「合わせて伝えること」です。
たとえば、
- 今の家庭状況や健康のことも含め、今このタイミングでは管理職に必要な責任を十分に果たせる自信がないこと
- ただし、今のポジションでこういう形で貢献していきたいと考えていること
- 将来、条件が変われば改めてチャレンジを検討したい意思があるかどうか
などを、落ち着いた言葉で共有することで、
「ただ嫌だから断る」とは違うメッセージになります。
「昇進を断る=キャリアの終わり」ではなく、
「今の自分と周囲にとって、一番無理のない選択をする」
という考え方もできます。
「いつまで」「どのレベルまで」なら、昇進を目指したいのかを考えておく
昇進を完全に否定するのではなく、
「自分は“どのレベルまで”ならやってもいいか?」
「“いつまで”なら、チャレンジしてみたいか?」
を一度考えておくことも役に立ちます。
- 課長クラスまではやってみてもいいが、それ以上のラインは目指さない
- 子どもが小さい間は無理せず、もう少し成長してからチャレンジしたい
- 親の介護が一段落するまでは、今のペースを維持したい
- 50代以降は、マネジメントよりも現場に近い仕事に戻りたい
といった具合に、「一生管理職」か「一生ノンマネ」かではなく、
時間軸とレベル感をセットで考えておくイメージです。
そのうえで、
- 今の誘いは、自分の想定と比べてどうか
- そのタイミングが少し早すぎるのか、むしろ遅いくらいなのか
- 自分から、タイミングや役割の相談をする余地はあるのか
などを検討してみると、「昇進する/しない」の二択から少し自由になれます。
おわりに──「昇進しない自分」も、ちゃんと選んだひとつのキャリア
管理職になりたくないと感じるとき、
私たちはつい、自分を「弱い」「やる気がない」と評価してしまいがちです。
でも本当は、
- 自分の性格や強み・弱みをそれなりに理解していて
- 仕事以外の大事なもの(家族・健康・人生の時間)も見えてきていて
- 「昇進=正解」という一枚の物差しだけでは測れないことに気づいてしまった
という、とても大事な感覚を持っているタイミングでもあります。
この記事で触れてきたように、
- 昇進だけが成長ではないこと
- 管理職という役割の中にも、自分の得意・不得意があること
- 自分の望む生活全体とのバランスを考える必要があること
- 場合によっては「昇進を断る」という選択もありうること
- 「いつまで」「どこまで」なら昇進を目指すかを自分で決めておいてもいいこと
など、いろいろな視点から「昇進=正解」という前提を緩めていくことができます。
どんな選択をしても、
周りから何か言う人はきっといます。
それでも、長い目で見れば、
「自分が納得して選んだ働き方」
「自分と周りを壊さないためのペース配分」
のほうが、ずっと大切です。
管理職になるかどうかは、キャリアの中のひとつの決断に過ぎません。
昇進を選んでも、選ばなくても、
「自分で選んだ」と言える形で決められたなら、それは立派なキャリアの一部です。
迷っている自分を責めすぎずに、
「自分にとっての正解」を、これから少しずつ言葉にしていけますように。
