職場に、どうしても苦手だなと感じる人がいる。
話し方がきつい、価値観が合わない、いつも否定される気がする……。頭では「社会人なんだからうまくやらないと」と分かっていても、顔を見るだけでお腹のあたりがぎゅっと固くなったり、近くに座るだけで疲れてしまったりすることがあります。
苦手な人が1人いるだけで、「仕事そのもの」よりも「その人とどう関わるか」にエネルギーを使い切ってしまう日もあるかもしれません。家に帰ってからもモヤモヤが続いて、「また明日も会うのか」と考えるだけで気持ちが重くなる。
この記事では、職場にいる苦手な人と、なんとか付き合っていくための現実的な距離のとり方をまとめていきます。
相手を好きになる必要はありませんし、無理に仲良くなる必要もありません。「できるだけ自分をすり減らさず、仕事を続けるための工夫」を一緒に考えていくイメージです。
全部を実践しなくて大丈夫です。
今の自分の状況や心の余裕に合わせて、「これなら試せそうかな」と思えるところだけ、拾ってもらえたらうれしいです。
「苦手な人」がいるのは、自分が弱いからではない
まず最初に、ちょっとだけ前提を整えます。
職場に「どうしても苦手な人」がいると、ついこんなふうに思ってしまいませんか。
- 社会人なんだから、誰とでもうまくやれないといけない
- こんなに気にしてしまう自分が、子どもみたいで嫌だ
- もっと割り切って接するべきなのに、それができない
でも、本当は「誰とでも同じように心地よく付き合える人」のほうが少数派です。
人には、それぞれこうした違いがあります。
- 価値観(大事にしたいもの)
- コミュニケーションの癖(話し方・声の大きさ・距離の近さ)
- 仕事との向き合い方(スピード重視か、丁寧さ重視か)
- 幼いころからの経験や、傷つきやすいポイント
それがたまたま自分と大きく違っていると、「一緒にいると疲れる人」「距離を取りたい人」として感じやすくなるのは、とても自然なことです。
「苦手な人がいる」という事実は、
「誰かを嫌う自分が悪い」ではなく、
「自分と相手には違いがある」というサイン。
まずはそのくらいの温度で受け止めてみてもいいのかなと思います。
「どこがしんどいのか」を言葉にしてみる
ただ、「あの人苦手」だけで止めてしまうと、自分の中でモヤモヤが大きくなっていくばかりです。
一度、ノートやスマホのメモに、こんなふうに分けて書き出してみるのがおすすめです。
- その人と関わると、どんな場面でしんどくなる?
- どんな言動が、自分にとって負担に感じる?
- その結果、体や心にどんな反応が出ている?
たとえば、
- 人前で冗談っぽく突っ込まれる → 笑って返すけれど、後から恥ずかしさと怒りでぐったりする
- 自分の意見を最後まで聞かずに遮ってくる → 話そうとする前からあきらめグセがついてしまう
- 愚痴や悪口を延々と聞かされる → 自分までネガティブになり、その日の仕事が手につかない
こんなふうに整理してみると、
「相手のすべてが苦手なのではなく、
こういうポイントが自分にはきついんだ」
と、具体的に見えてきます。
これは、このあと出てくる「距離のとり方」や「安全なルール」を考えるうえでも、大事なヒントになります。
自分を守るための「距離感」を決めておく
職場の人間関係でしんどくなる大きな理由のひとつは、
「どこまで関わったらいいのか」があいまい
なことです。
距離が近すぎると疲れてしまうし、
距離を取りすぎると、それはそれで気まずくなる。
そこで、自分なりの「基本距離」を決めておくと、少しラクになります。
仕事はきちんと、プライベートは最低限
たとえば、こんな線引きです。
- 仕事上の連携・報連相は、必要な分はしっかり行う
- でも、プライベートな雑談・飲み会・深い相談には、あまり踏み込まない
つまり、
「仕事仲間としての関係には責任を持つけれど、
友だちのような近さまでは求めない」
という距離感です。
この線を自分の中で決めておくだけでも、
- 「雑談にあまり参加できなかったけど、大丈夫かな?」
- 「飲み会を断ったら、嫌われたかも」
といった不安が、少し和らぎます。
会う時間を「必要な範囲」にしぼる
苦手な人と、長時間同じ空間にいると、それだけで疲れが溜まっていきます。
もしできそうであれば、次のような工夫も考えられます。
- 休憩時間やランチは、別のメンバーと過ごすようにする
- 席を変えられるなら、物理的な距離を少しだけ離してもらう
- 必要な打合せだけ参加して、関係の薄い雑談タイムは無理に残らない
「一緒にいる時間」が短くなるだけでも、心の消耗はかなり変わってきます。
相手の「行動パターン」から、安全なルールを作る
苦手な相手との関わりは、「性格」で考えると途方もなく感じますが、
「行動パターン」レベルで見ると、対策が立てやすくなります。
たとえば、その人がこんなタイプだったとします。
- すぐに人の仕事の粗探しをする
- 愚痴や悪口をよく言う
- 自分の話ばかりして、あまり人の話を聞かない
この場合、それぞれに「安全ルール」を用意できます。
粗探しタイプには、「事前に一歩先回り」
- 報告するときは、突っ込まれそうな点を先に自分から言っておく
例)「ここはまだ途中で、○日までに修正予定です」 - 完璧にしてから見せるのではなく、「60~70%の段階で確認をもらう」と決めておく
「どうせ何か言われる」のなら、
こちらから先に「未完成な部分」を言語化してしまうほうが、
心のダメージが少なく済むことがあります。
愚痴・悪口タイプには、「時間とテーマの上限」を
- 愚痴モードに入ったら「今から10分だけなら聞ける」と心の中で決めておく
- もしくは、「申し訳ないけど、今ちょっと集中したい仕事があって」と席を立つ
- 自分の前で誰かの悪口が始まったら、「そうなんですね」とだけ返し、あまり同調しすぎない
ずっと聞き役でいると、自分の心が沈んでしまいます。
「どこまで付き合うか」のラインを、自分の中で決めておくことが大切です。
自分の話ばかりするタイプには、「聞く姿勢の量」を調整
- 「そうなんですね」と数回相づちを打ったあと、「私のほうは最近こうで…」と話題を一度だけ変えてみる
- それでもまた相手の話に戻るようなら、「この人とは“聞き役7:自分3”くらいでいい」と割り切る
「対等にキャッチボールできる相手」と、「基本は聞く側になる相手」を分けておくと、
期待しすぎてがっかりする回数も減っていきます。
会話の中でできる、ささやかな守り方
苦手な人と話しているとき、
つい、相手に合わせすぎて自分の感情が置き去りになってしまうことがあります。
ここでは、会話中に使える「ささやかな守り方」をいくつか挙げてみます。
1. 「そうなんですね」で、一度受けてから距離を取る
相手の意見に完全に賛成したくないとき、
でも、露骨に反対するのも面倒なとき。
そんなときは、
「そうなんですね」
「そう感じているんですね」
というフレーズを持っておくと便利です。
これは、
- 「あなたがそう思っていること」は受け止める
- でも、「自分も同じ意見」とまでは言っていない
という、ちょうど中間の位置に立てる言葉です。
2. 自分の境界線をふんわり伝える
もし、相手の言動でどうしてもつらいことがあるなら、
柔らかく境界線を伝えてみるのも一つの方法です。
たとえば、
- 「人前でいじられると、ちょっと恥ずかしくて…できればそっと教えてもらえるとうれしいです」
- 「仕事中にプライベートなことを聞かれると、少し集中が途切れてしまって…。また今度ゆっくり話せたら」
強く言わなくて大丈夫です。
「自分はこういうのが苦手で…」と、自分側の事情として伝えるのがポイントです。
伝えても変わらない人もいますが、
こちらが一度境界線を示したことには意味があります。
それ以降、同じようなことが起きたときに、
「やっぱりこの人は人の境界をあまり尊重しないタイプなんだ」と整理できるからです。
相手を変えようとしすぎない
苦手な人との関わりで、一番疲れるのは、
「どうしたらこの人を変えられるだろう」
と考え続けてしまうことです。
- ああ言えばこう言う
- 注意しても直らない
- 他の人にも同じようなことをしている
そんな人を、こちらの力だけで変えるのは、現実的にはとても難しいことです。
ここで一度、視点を切り替えてみます。
「相手を変える」「関係そのものを良くする」ではなく、
「その人との関係で、自分を消耗しすぎないようにする」
その視点に立つと、
- どんな距離感なら、今の自分でも保てそうか
- どんなときは、あえて近づかないほうがいいか
- どんな場面なら、一緒にいてもそこまでしんどくないか
という、「自分側の選択肢」が少しずつ見えてきます。
相手の性格や態度は、簡単には変えられません。
でも、
「どれくらい関わるか」「どう受け止めるか」は、少しずつ自分のほうで選び直すことができます。
信頼できる人を「一人」持っておく
苦手な人との関係は、
一人で抱え込むと、どうしても視野が狭くなっていきます。
- 自分が悪いのかな
- 考えすぎなのかな
- 愚痴っぽくなるから誰にも言えない
そんなふうに黙り込んでしまうと、
「しんどさ」が心の中でどんどん膨らんでしまうこともあります。
もし可能であれば、
- 同じ職場の、信頼できる同僚・先輩
- 職場の外の友人や家族
- 必要であれば、産業医・カウンセラーなどの専門家
など、「この人には話しても大丈夫」と思える相手を一人だけ持っておくと、だいぶ違います。
ただし、愚痴だけを言い続けると、それはそれで苦しくなることもあります。
そんなときは、こんな話し方も試してみられます。
- 「ちょっと聞いてほしいことがあって…」と前置きする
- 事実ベースで何があったか話す
- 最後に「どうしたら自分の心が楽になるかな、と考えていて…」と添える
「相手をどう変えるか」ではなく、
「自分がどう振る舞うと楽か」を一緒に考えてもらうイメージです。
それでもつらいときに考えてもいい「逃げ道」
どれだけ工夫をしても、
どうしても一緒にいることがつらい人、
自分の尊厳を傷つけてくるような人も、残念ながらいます。
- 明らかなパワハラ・モラハラ
- 人前での執拗な否定や攻撃
- 無視や仲間外しなどの行為
こうしたものは、
「自分の考え方を変えればなんとかなる」という範囲を超えています。
その場合は、
- 上司や人事に相談する
- 会社の相談窓口があれば利用する
- 外部の相談窓口(労働相談・専門機関など)を頼る
- 可能であれば部署異動・転職も視野に入れる
といった「逃げ道」を考えてもいいのだと思います。
「逃げるのは負け」「我慢が足りない」
と自分を責めてしまうかもしれませんが、
心や体を壊してしまってからでは、回復にとても時間がかかります。
自分の身を守るために環境を変えることは、
決して弱さではなく、
**「自分の人生を自分で守る選択」**です。
「苦手な人」との距離をとりながら、自分の軸を育てていく
最後に、もうひとつだけ。
職場にいる苦手な人は、
私たちにとっては「できれば関わりたくない存在」かもしれません。
けれど、その人との関係を通じて、
- 自分が何を大事にしたいのか
- どんな言動が、自分の心を傷つけるのか
- どこまでなら譲れて、どこから先は譲れないのか
が、少しずつはっきりしてくることもあります。
それは、
「自分の軸」や「境界線」を知るための、痛みを伴う経験でもあります。
もちろん、「成長のため」と割り切れるほど簡単ではありません。
毎日のように顔を合わせるなかで、しんどさが勝つ日もたくさんあると思います。
それでも、
- 距離のとり方を工夫してみる
- 自分を守るルールを少しずつ作っていく
- 信頼できる人と気持ちを分かち合う
- どうしてもつらいときには、環境を変える選択肢も持っておく
そんなふうに、
「苦手な人との関係そのもの」をなんとかしようとするのではなく、
その中で、自分をどう守り、どう育てていくかを少しずつ考えていけたら、
今より少しだけ、呼吸が楽になる瞬間が増えていくかもしれません。
今日の記事の中から、
「これなら明日から試せそう」と思えることが、ひとつでも見つかればうれしいです。
職場にいる苦手な人がすぐに変わることはなくても、
その人との付き合い方を選び直すことで、
あなた自身の毎日は、少しずつ変わっていきます。

